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転生凡人の英雄作成教室【書籍化&コミカライズ化】  作者: 紗沙
第3生徒 かつての自分の影

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第54話 見えた光明

「ふっ! ふっ! ふっ!」


 一心不乱に剣を振る。

 月下、街にある人気のない広場で、僕は戦技『強斬ごうざん』の再現をしようと藻掻いていた。

 ここ数日は毎日やっている日課。


 でも苦には感じない。早くアンナ達に追いつきたいから。


 剣を何度も振るっているうちに、少しずつ感覚を掴めた気がする。

 もう少し……あと少しで何かが。


「あっ」


 振り下ろした剣が、淡い光を発していることに気づいて手を止める。

 来た。掴んだ。これだ。


「やった……やったんだ……これだ。これを、もっと頑張れば」


 自然と口角が上がるのを感じつつ、僕は剣を振り続ける。

 感覚を掴めれば、あとはもう時間の問題だった。

 微調整を行っていけば、たどり着く。


 剣を振り下ろしたとき、強い風が吹いた。


「は……はは……」


 胸に熱い何かがこみあげてくる。


「できた……できた。……やった、やれたんだ……」


 剣を握る手にも力が入ってしまう。

 嬉しくて嬉しくて、視界が滲んでしまうほど。

 長かった。ここまで来るのが、とても長かった。


「あとは、これを僕にとって一番良い形に持っていけば完成だ。エンディさんにも協力してもらって……あ」


 今後について希望を抱いていた時、あることに気づいた。

 僕は今、エンディさんに秘密にして自主練をしている。

 もし明日になって急に僕が『強斬』の再現ができるようになっていたら怪しまれる。


「……できないフリをして……途中でできるようになったってことにして大丈夫かな?」


 なんとか解決策を思いついたけど、あのエンディさん相手に通用するのか。

 そう思った時。


「? 誰」


 足音を聞いて僕は背後に声をかける。

 広場に足を踏み入れたのは、ミルキーだった。


「今日も精が出るわね、ルイ」


 彼女はそう言うと僕の元まで来て、魔法を使ってくれる。

 ここ毎晩、彼女はここに来て、僕の疲れを癒す手助けをしてくれていた。


「ありがとうミルキー」

「構わないわよ。こういうのができるのは僧侶の私だけだし。でもアンナもユウリィも心配していたわよ」

「うん、大丈夫だから」

「……そう」


 そうだ、と思い出して、僕は少し興奮して口を開いた。


「再現! 再現できたんだ! まだ『強斬』だけど、できたんだ!」

「……ほんと? 良かったじゃない」

「うん、ちょっと見てて」


 そう言って僕はミルキーから少し離れて、さっき成功させた『強斬』を再現する。

 今回もさっきと同じように、淡く光る剣が空気を斬り裂いた。


「やるじゃないルイ! 努力が報われたわね。 ……そっか、良かった。ちゃんと……」


 最後の方は小さくて聞き取れなかったけど、ミルキーは僕の成功を喜んでくれているみたいだった。


「ついさっき出来るようになって……あ、でもエンディさん達には内緒にしてくれないかな? ほら、いきなり出来るようになってたら……ね?」

「ああ、そういうこと。……いいわよ。イヴ様には黙っておくし、私とあの男は話すことほとんどないから。朝にアンナ達にも伝えておくわ」

「うん、ありがとう……じゃあ僕は次に移るよ」

「……え?」


 ミルキーの戸惑った声に、僕は動きを止めた。


「で、でも今日は『強斬』を再現できたのよね? なら今日くらいはもう終わりにしても――」

「いや、僕は皆より遅れてる。取り戻す絶好の機会なんだ」

「ま、待って……流石に無理しすぎよ。私だけじゃないわ、アンナやユウリィにも言われたでしょ?」


確かに、三人は僕の事を心配してくれている。

それはありがたいと正直思う。思うけど。


「……それでもやらせてほしいんだ」


 まっすぐにミルキーを見つめると、彼女は何かを言おうとしていて。

 けれど何かを堪えるようにして、目線を外した。


「……分かっ……たわ。じゃあもう少しだけ魔法をかける。でも本当にあと少しだけにして」

「うん、ありがとう」


 パーティメンバーに感謝を告げて、僕は再び自主練へと戻る。

 練習に精を出しながらも、エンディさんにバレないかはずっと不安だった。






 ◆◆◆







 結論から述べると、エンディさんから何かを言われることは無かった。

 模擬戦闘では『強斬』を再現をしそうになるのを必死におさえて、戦技の再現の時には、途中から勘を掴んだように振舞った。


『おお、ついに感覚を掴んだか。良いじゃねえか。あとはそのまま使っていけば、『強斬』になるはずだ』


 その言葉を聞いた後に数回剣を振り、『強斬』の再現をした。

 もちろん、しっかりと喜んでいるふりをしたけど、上手くできていたかはあまり自信がない。


『よくやった。まだ一つと思うかもしれねえが、最初の一歩は重要だ。その感覚を忘れるな』


 エンディさんはそう声をかけてくれたけれど、目を見ることはできなかった。

 もしも視線を合わせれば、全てを見透かされてしまいそうな、そんな気がしたから。


 そうして今日の授業を無事に終え、宿屋へと帰ってきた僕は、日課の自主練をするために広場を訪れていた。


「今日は『崩落ほうらく』……」


『強斬』の再現ができるようになったことで、エンディさんが次に挙げた戦技は予想通り『崩落』だった。

 だからその自主練を今日からやろうと思ったところで、僕は考えてしまった。


「でもアンナは……もっと先に……」


 既に三つ目の戦技の再現に成功している幼馴染のことを思い出す。

 彼女は、僕が何日もかけた『強斬』だって、それよりも短い時間で再現していた。

 このままじゃ……差は広がるばかりだ。


「それに……そもそも熟練度が違うし……」


 僕は剣の熟練度がEで、アンナはD。

 日々の授業は真剣に取り組んでいるけど、目に見えて効果は出ていない。

 このEとDの差を、まずは埋めないと。


 でもそのためにはどうすればいいのだろうか。

 戦技の再現は新しい試みではあるけど、それだけじゃダメな気がする。


「熟練度を上げるには、これ以上どうすればいいんだろう? もっと強い魔物を倒すとか?」


 とはいえエンディさんの敷地の周りよりも強い魔物が出てくる場所なんて、それこそ別の領地になってしまう。

 夜のわずかな時間で移動するのは無理だ。

 それにスカーベアですらギリギリなのに、それよりも強い魔物と一人で戦うのは危険すぎる。


「できること、ないのか……いや、でも……」


 ふと、あることを思いついた。


「……僕はエンディさんからDランクの戦技について教えてもらってはいる。なら……ならそれを動きで再現できるようになれば、Dランクの戦技を使える?」


 ひょっとしたらそれをすることで、熟練度を上げることもできないだろうか。

 戦技の再現っていう逆の事ができたのと同じように。


「……やってみよう。ひょっとしたら何か、掴めるかもしれないし」


 手ごたえを感じている今なら、何でもできそうな気がする。

 僕はDランクの戦技『風薙かざなぎ』を再現するために、まずはアンナに見せてもらおうと思い、宿へと引き返すことにした。

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