表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生凡人の英雄作成教室【書籍化&コミカライズ化】  作者: 紗沙
第3生徒 かつての自分の影

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/85

第45話 教室の増築

「アンナ・フランソワです。剣と盾を使用する前衛です」

「ルイ・クロードです。アンナと同じく、剣を使用する前衛です」

「ユウリィ・フレームです。マルク・マギカ出身の魔法使いです」

「ミルキー・ホワイト。アーセラス出身の回復術師……です」


 四人がそれぞれ自己紹介をする。

 前衛二人に魔法使い一人、回復術師一人のバランスが取れたパーティのようだ。


「私がアンナ、ユウリィ、ミルキーを指導するので、先生はルイを指導する、というのでどうでしょうか?」

「……初回から三人も一気に指導するのか?」

「なので都度、先生と情報共有して三人の指導方針が合っているかは相談したいです……よいですか?」

「そういうことならいいぞ」


 俺が統括して、イヴが手足となって動く感じか、と考えた。


「で、俺が教えるのはお前と。よろしくな」

「は、はい! よろしくお願いします!」


 割り当てられたルイという名前の少女は、なんというか、弱気な少女という感じだった。

 今も俺をチラチラと見ていて、会った当初のイヴを思い出す。

 だから俺に任せた方がいいとイヴは思ったのかもしれない。


「エンディさんについに待望の教え子が……」

「うるせえぞサトリア。つーかまだいたのか。仕事に戻れ」

「……エンディさんには言われたくないんですが。まあいいです。戻りますよー。イヴさん、それではまた」

「はい、また」


 イヴに手を振って、サトリアは受付の中へと戻っていく。

 その際に俺の方には手を振るどころか一切目も向けない当たり、相変わらずだなと思った。


 見送り終わって視線をイヴの方に戻せば、当然その後ろにいる四人も視界に入る。


(それにしても、一気に四人の教え子を抱えることになるとは。俺の教室も大きくなったもんだ)


 そう思ったところで、あることに思い至った。


「いや待て、俺の教室知ってるだろ? 俺たち六人は入れねえぞ」


 以前、イヴの時にもあった場所の問題。

 あの時は生活住居の問題だったが、今回は教室の方に問題がある。

 小屋の教室では狭いし、椅子も四つしかない。


「大丈夫です。考えてあります」


 そう言ったイヴは半透明のプレートを俺に差し出してきた。

 反射的にそれを受け取り、自然と所持金の欄に目が行く。


「お金はあります。教室を増築すればいいんです」

「……すげえな、この金額」


 プレートを返しつつも、俺は内心で残念に思っていた。

 さっきのミルキーの言葉ではないが、冒険者を辞めたのは間違いだったと思う。

 主に俺の財布事情として。


「先生の教室や生活住居を作った方なら、できます……よね?」

「ああ、問題ないだろ」


 イッテツさんはミラクル大工さんだ。

 部屋の増築なんてちょちょいのちょいに違いない。

 つい最近魔法の的も直してもらったし、それなりに交流は続いているし。


「そういうことなら、今からイッテツさんのところに行くか。話を通すぞ」

「はい!」


 元気なイヴの返事を聞き、俺は頷いて返した。


 急な生徒の増加や教室の増築など、中々に激動の一日になりそうだ。

 イヴという金脈を失ったが、教室というセカンドプランに真剣に移行したと思えば悪くはない。

 ムゥというこれからの金脈もいるし、何とかなるだろう。


 なにより金はイヴが出してくれるということで、俺は上機嫌になった。




 ◆◆◆




 宿を取るということで「星の牙」の四人と分かれ、俺たちはイッテツさんの工房に向かった。

 鉄製の扉を開ければ多くの弟子が忙しなく作業をしていて、そして奥から扉の開閉の音を聞きつけたのか、イッテツさんが顔を出した。


「おう、エンディじゃねえか。どうした?」

「イッテツさんに作ってもらいたいものがあってな」

「なんだぁ? お前さん、まさかまたぶっ壊したのか?」


 剣呑な雰囲気になるイッテツさんを見て、俺ははっきりと首を横に振る。


「違えよ。今日は増築をして欲しくてな」

「増築? そういうことならこっちへこい」

「ああ」


 ついていくと、会議室のような場所についた。

 イッテツさんの前にある長椅子にイヴと二人で腰掛ける。


「で? 増築って?」

「ああ、教室をな。規模を大きくしたいと思って」

「大きくするだぁ? なんでまた」

「こっちの……イヴって言うんだが、こいつを教師として雇う?んだ。だからもう一つ部屋が欲しい」

「そうなのか」


 イッテツさんは少しの間だけイヴに目線を向ける。

 するとイヴはゆっくりとお辞儀をしていた。

 それにイッテツさんも応えて小さく頭を下げる。


「初めまして、先生の元教え子のイヴです」

「大工のイッテツだ。……教え子っつうことは、あの嬢ちゃんの前のか?」

「ああ、ムゥが二人目で、イヴは一人目、つまり最初の教え子だ」


 そういえばイッテツさんはムゥとは面識があったが、イヴとは無かったな。

 イッテツさんは髭を片手で弄り始めた。


「お前さんが教室をやると聞いたときは続かんと思っていたが、こうして見るとちゃんと生徒に教えとるんだな」

「まあ、そこはいいだろ。……で、教室を増築したいんだが、どれくらい金がかかる?」

「そのことなんだが、増築は無理だ」

「……え?」


 あっさりできると思って聞いてみると、イッテツさんは首を横に振った。

 無理とは、どういうことだろうか。


「ああ、無理ってのは言葉が悪かったな。あまりおススメしない。……つーのも、実を言うとお前さんの最初の依頼の時に、教室増築の可能性はないって聞いていたからな。俺もお前さんが長く続けると思っていなかったから、そういう風に造ってない。

 だから増築するよりも、一度立て壊して新しく作った方が安上がりだ」

「あー、そういうことか」


 確かに教室を作る際、増築の可能性があるかと聞かれた記憶がある。

 そのときは生徒を一気に教える予定が俺にはないから断ったんだったな。


「無理に改築すると耐久性に問題も出るからな。だから壊して建て直すってのでいいか?」


 イッテツさんの言葉に、少し考える。

 今の教室には思い出がある。けれど寂れていく姿を考えると、少しだけ心が痛んだ。


「ああ、じゃあそれで――」

「ま、待ってください!」


 イッテツさんの提案を受け入れようとしたところで、イヴから声が飛んだ。


「壊すのではなく、新しく建てるだけではダメですか? 一帯の土地は先生が所有しているんですよね? だったら今の小屋の教室は残して、建てるのは……」

「こっちは別に構わねえぞ。壊す分の費用が浮くからお前さん達にしても良いとは思うが、ただ今の小屋の教室は残りっぱなしになる」

「……取り壊してもいいんじゃねえか? 廃墟のようになるのもな」


 思ったことを口にすると、隣に座るイヴが俺に向き直り、大きな声を出した。


「せ、先生!」

「お、おう」


 勢いに驚いていると、手を掴まれる。


「お願いします。お金は出しますし、今の教室の手入れは私がしますから……だから……」

「……まあ、お前がそこまでいうなら」


 実際金を出すのはイヴだし、小屋の教室の手入れもしてくれるなら良いだろう。

 俺の言葉にイヴの表情は明るくなる。

 それを横目に、俺は懐から事前にもらっていた紙を取り出し、テーブルに置いた。


「部屋の図面はこんな感じなんだが、大丈夫か?」


 イッテツさんは紙を手に取って、目を通す。

 事前にイヴが書いてくれた教室の図面はイッテツさんから見ても問題がなかったらしく、二度頷いてくれた。


「問題ねえな。これなら一週間もありゃ出来るぞ」

「……相変わらずすげえな」


 イッテツさんはそういった建築関連のスキルでも持っているのか、建物を作るのがめちゃくちゃ早い。

 この世界で最強なのは彼なのではないか。スーパー大工イッテツさん、カッコいいぜ。


(っと、そういやムゥからも言われていたな)


 手紙に書かれていた内容を思い出し、俺はイッテツさんに別件についても話してみた。


「あと、生活住居に部屋を一つ増やしたいんだ。以前増やした部屋の隣にでも増やして欲しいんだが」

「ああ、構わねえぞ。金は前と同じくらいだ」


 ムゥから手紙と一緒に金が送られてきたし、足りない分は後から払うと言ってくれている。

 新たなパトロンの意向には応えなければならないのである。


「……先生?」

「あ? なんだ?」

「部屋とは?」

「ああ、お前にも手紙で言ってただろ? ムゥっていう奴がいるんだが、そいつが手紙で部屋を増やして欲しいって言ってきていてな。客室が二つあってもいい、とか書いていたが、ひょっとしたらお前が戻ってくるのを読んでいたのかもな……いや、面識ないしそんなわけねえか」


 ムゥからの手紙について答えると、イヴは聞き取れないほどの小さな声で何かを呟いた。


「へぇ……先生の家に、自分の部屋をですか……ふーん?」

「……イヴ?」

「先生はムゥという女の子の要望に応えて、彼女用の部屋を作る、と?」

「あいつ用の部屋じゃなくて客室だがな。それに金をもらったんだから当たり前だろ。結構多く払ってくれるらしいしな」

「先生はお金以外にも見るべきものがあると思います。いや、お金を見るのは別にいいんです、私も使ってる手段ですし……でももっとこう、他にも……」

「何言ってんだお前?」


 イヴの言っていることがよく分からないものの、彼女は複雑な表情をしているのであまり触れないことにした。


「そうなると、まずは生活住居を改築して、その後に教室だな。生活住居は部屋を増やすだけだから一日で足りるはずだ。増築工事は結構音がうるさいから、一日だけ宿でも取ってくれや」

「あー、そうなのか……んや、イヴの音を遮断する魔法あったよな? それ使えばいいんじゃね?」


 ふと思い出したので聞いてみると、イヴは少しだけ動きを止めた後に、ニッコリと微笑んだ。


「申し訳ありません先生、あの魔法、一日に一回しか使えないんです」

「あ? そんなわけねえだろ」

「使えないんです」

「……まあ、お前が言うならそうか」


 深く聞かない方がいい、とりあえず頷いておけ、と俺の本能が訴えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ