第31話 ムゥの独白2
マルク・マギカの実家を家出して、遠くまで旅をしてたどり着いた場所。
それがエンデーの家だった。この場所で私はエンデーに出会い、そして彼の生徒になった。
私はここが好きだ。
魔法をいくらでも考えられる教室も、穏やかに日々を過ごせる家も、好き。
ここに居ていいんだって思うと心がポカポカする。
でも、エンデーのことは変な人だと思う。
お金に汚くて、生徒のことを金づるって言って、言葉遣いも乱暴で、私のことをクソガキってたまに言う。
それだけ挙げてみると、とんだ性悪だなって思う。
でも、エンデーはそれだけじゃない。
彼は教師で、学校の先生とは教え方がまるで違う。
ううん、先生っていうよりも、相棒みたいな感じだ。
私のために時間を使ってくれて、私のために考えてくれる。
口ではお金のことばっかり言ってるのに、夜遅くまで起きててクマができてたり。
言葉遣いは乱暴なのに、目は絶対に私から離さなかったり。
大人だけど、今まで出会ったどの大人ともエンデーは違う。
本当に変な人だけど、全然違うってそう言える。
でも違って良いんだと思う。
ここでエンデーに会えて、本当に良かったと思う。
ずっとここに居れればなぁ、なんて思う日もある。
ううん、毎日そう思ってるだろう。
今ではエンデーと一緒に頑張ることで、魔法の腕も飛躍的に上がった。
このままここで、どんどん魔法を使えるようになりたい。
「……頑張る」
そう呟いて私はエンデーと私の服を紐に引っかけて干す。
時間帯は昼前で、太陽が昇っている。
魔物狩りから帰ってきた後の私の日課だ。いや、日課になった。
白いシャツやエンデーの黒いズボン、私の灰色の外套が日の光に当たり、風に揺れている。
そんなとき、裏手の扉を開けてエンデーが家から出てきた。
「あ、これも頼むわ」
籠に入れて持ってきたのは追加の洗濯物だった。
もう干している段階なのに今更なんて、遅いにもほどがある。
「遅刻」
「あー、まあ明日でも良いか」
「……今日だけ、次、ダメ」
「お、サンキュー」
仕方ないと言って受け入れると、エンデーは軽い調子で笑って家の中へ戻って行った。
少しムッとしたけど、彼がずぼらなのはいつもの事。
私も同じようなものだからそこまで強くは言えないけれど、ジト目を向けるくらいは許されるだろう。
「……むぅ」
呻いて、私はエンデーが置いていった籠を手に取る。
このくらいの少ない量なら水魔法と洗剤を使って洗って、今から洗えば間に合うだろう。
新たに家主に増やされた作業をめんどくさいなと思いつつ、私は着手する。
逆らえないというのもあるが、逆らうつもりがないというのもある。
住まわせてもらうのみならず協力者のような関係だから、これくらいはしたい。
ただそれとめんどくさいと思うのは別ってだけ。
「…………」
振り返れば、空は青空で白い雲が映えていて、遠くの木々は茶と緑。
そして色とりどりの洗濯物が、風に揺らされている。
私の視界は、色彩に満ちていた。




