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転生凡人の英雄作成教室【書籍化&コミカライズ化】  作者: 紗沙
第1生徒 足手まといの冒険者少女

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第17話 しつこい冒険者

 助けてくれたおばさんの家を出た後、私はエステルの街のギルドを訪れていました。

 扉を開き、中に入れば冒険者達の視線が向けられます。

 それらを無視して受付へ向かえば、遠くにいたサトリアさんと目が合いました。


「イヴさん!」


 彼女は私に気づくと受付の方へ出てきてくれました。


「お久しぶりです、サトリアさん」

「本当にお久しぶりですね。最近姿を見ていなくて、ちょっと心配していたんですよ?」

「すみません、少し……先生との授業や自分の修行に時間を費やしていました」


 言いにくさを感じたものの、事情を説明すれば、サトリアさんは頷きました。


「そうだったんですね。エンディさんの授業は順調ですか?」

「はい……つい先ほど卒業の判定をもらったところです。先生からはさまざまなことを教わりました」


 なんて答えようか迷いましたが、とりあえず卒業したということにしておくことに。

 先生……いえ、あの男に斬られた、ということを説明しても信じてはもらえないでしょうし。


「あ、あら?」


 しかし、思っていた答えと違ったらしく、サトリアさんはきょとんとした表情を浮かべます。


「え、えっと……あんまりでしたか? もしお金だけ取られたなら、私の方からガツンと言いますよ?」

「いえ、私の方でも十分学んだなと思っています。お金に釣り合うだけの物を授けていただきました」


 冗談ではないと思い、嘘を重ねます。


「そ、そうですか……まあエンディさんもああ見えて二級冒険者ですし……ただ普通の二級冒険者の方なら間違いないんですけど、あのエンディさんですからねぇ……」


 一応口では納得したように言ってくれていますが、遠くを見るサトリアさんの視線はまだあの男を疑っているようです。

 ただ、これ以上あの男に関する話をしていても埒が明かないと思い、話を切り替えました。


「サトリアさん、実は私、明日にはこのエステルを出ていこうと思っているんです」

「え? そうなんですか? いったいどこに行くんです?」

「とりあえずは東のサイネイル領にでも行こうと思います。今回ここを訪れたのは、お別れを言う前に、最後に依頼を受けようかな、と」

「そうだったんですか……その……エステルの街は合いませんでしたか?」


 気遣うような視線を向けてくるサトリアさんに、私は首を横に振った。


「いえ、そういうわけではないんです。ただ、先に進みたいな、と」


 理由は色々あります。エステルの街周辺の魔物は少し弱いことも理由の一つです。

 それにこの街にいると、どうしてもあの男のことを思い出してしまう。

 新しい地で心機一転努力するのも、悪くないでしょう。


「分かりました。それでは依頼ですが、いかがしますか?」

「六級の依頼をお願いできますか? 魔物の討伐系でお願いします」


 剣に関しては熟練度はDランクに至っていて、実力的には四級の依頼にも挑戦できます。

 ただ冒険者階級の昇格を受けていないので、ここは六級を選びました。


「……あの、パーティは組んでいますか?」


 サトリアさんはそう言って、伺うような視線を私に向けてきました。

 それに対して答えようとしたとき。


「あ? お前……久しぶりに見たな」


 後ろから声を掛けられました。

 振り返ると、以前パーティを組んだ方が立っていました。

 名前は……何だったかと思いだそうとしていると、サトリアさんが彼に声をかけました。


「こんにちはテイガーさん、少しお待ちくださいね。今こちらの方と依頼を決めている最中ですので」

「あ? ……ああ、少し前もクッソ簡単な依頼を受けていたな」


 テイガーという男との会話はそこそこに、サトリアさんは私との話に戻りました。


「……それで六級の魔物討伐依頼をお望みとのことでしたが、パーティは組んでいますか?」

「いえ、ソロでやります」

「え? ソロ?」


 簡単な依頼ならともかく、魔物討伐となれば少し質が違ってきます。

 だからこそ、サトリアさんは止めにかかります。


「イ、イヴさん、考え直してください。エンディさんの影響かもしれませんが、ソロはあまりにも危険です。パーティを組むべきです」

「いえ、問題ありません」

「で、ですが……」


 サトリアさんが気遣う視線を向けてきて私は困りました。

 あの男の所有している土地周辺に出現する魔物を一人で狩れるくらいには強いのですが、そのことを説明しても納得してはくれなさそうです。


 ふとその時、視線を感じます。

 なんとなく首だけで振り返ると、テイガーという男がじっと私を見ていました。


「ふーん」


 そう言ったテイガーは私の横に来て、サトリアさんに話しかけます。


「なあサトリア、ならこういうのはどうだ? 俺がこいつの面倒を見る。ならいいだろ?」

「テ、テイガーさん? い、いや、以前にテイガーさんはイヴさんとパーティを組むのを嫌がってたじゃないですか……」

「なに、時間が経てば少し落ち着いてな。まあ、別にいいかなと思ってよ」

「は、はぁ? い、いえ、ですが……」


 話がおかしな方向に進んでいることを悟り、私は口を挟みます。


「待ってください。私はそもそも誰ともパーティを組むつもりはありません」


 ソロで活動する、というのは私の力を発揮するうえでの絶対条件です。

 パーティを組んでも意味はありません。

 それに、誰かと共に戦うなんていう選択肢は今の私にはありませんでした。


「あ? 何だお前、組んでやるって言ってるんだから受けとけよ。前だって組んで欲しいって言ってきただろうが」

「前はそうでしたが、今回は求めていません」


 言い返して、私は気づきました。

 テイガーという男が私に向ける視線には、気持ち悪いと感じる何かが混じっていることに。

 まるで私を見定めするような視線に、薄気味悪さすら感じました。


 それを受けて、私の中でこの男とパーティを組むことはこれから先あり得ないと、元々思っていた気持ちがさらに強くなります。

 というより、私は誰も心から信じないと決めたのです。誰かと共に戦闘し、背中を預けるなど、あり得ません。


 私はサトリアさんに向き直り、彼女の目をまっすぐに見ました。


「例え依頼が失敗しようとも冒険者の自己責任。依頼階級があまりにも上な場合はギルドが止めることもありますが、同じ階級で止められることは無い筈です。違いますか?」

「い、いえ、イヴさんの言う通りです。もちろんソロで魔物討伐の依頼を受けることもできます……できますが……」


 サトリアさんの心配が、今回ばかりはうっとうしい、と思いました。

 私は一人でやりたいと、最初からそう言っているではありませんか。


「なら受けさせてください。ソロで、六級の依頼をお願いします」

「…………」


 私をじっと見つめたサトリアさんは観念したように深くため息をつきます。

 仕方ない、と言わんばかりに私に依頼の紙を差し出してくれました。


「では、これをお願いします。……本当に気を付けてくださいね? 魔物討伐は危険ですから……」

「ありがとうございます。では」


 踵を返し、私はギルドの出口に向かいます。

 その途中で依頼の紙に目を落とし、倒すべき魔物の名前を確認。

 あの男のところで魔物狩りをしたときにも倒したことがある魔物のようで、問題ないと確信しました。


「おい、待てよ」


 しかし、ギルドを出てから少し歩いたところで私は呼び止められます。

 振り返ると、先ほど受付で少しだけ会話をしたテイガーが追いかけてきたようでした。

 それにしても、相変わらず私の身体に嫌な視線が向けられます。

 昔はこんなに分かりやすいものに気づかないほど何も知らなかったのかと、かつての自分に呆れました。


「強がるのはいいが、強い味方を手にするいい機会だ。パーティ、組んだ方がいいんじゃねえか?」

「いえ、さっきも言いましたが私はソロで問題ありません」


 面倒だと思い、私は彼から視線を外して歩き始めます。

 しかし、テイガーという男はついてきました。


「ギルドの受付では見栄を張りたかったんだろ? ここだったらサトリアの目はないぜ?」

「必要ありません」

「おい、こっちが組んでやるって言ってるんだから、受け入れてくれても良いじゃねえか」

「…………」

「おい! 無視するな!」


 気配を感じた瞬間に少しだけ前に出て、腰の直剣に手をかけて勢いよく引き抜きます。

 そして振り向き際に、テイガーの首筋に刃を添えました。


「な……」

「言ったはずです。必要ないと。あなたは確か四級冒険者のはず。そんな方が、六級冒険者の私に構わないでください。あなたの時間の無駄です」


 強く拒絶の意志を示し、剣を鞘に納める。

 そうして踵を返し、私は再び歩き始めました。


「……ちょ……痛い……わねえと……ダメ……だなぁ」


 背後で呟いたテイガーの声は、小さすぎて私の耳には入りませんでした。

 けれど彼が向けてくる嫌な視線だけは、ずっと背中で感じていました。

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