第12話 イヴの独白
「まあ、座れよ」
その言葉を、今でもよく覚えています。
流れに流れてたどり着いたエステルのギルド、そこでパーティメンバーからクビを伝えられた私は先生に出会いました。
最初はパーティを組んでもらえるのかと思いましたが、先生が提案したのは私を指導するということ。
私はそんな先生の提案を受け入れ、彼の生徒になりました。
先生は不思議な方です。
邪な気持ち……特に金銭に対する並々ならぬ執着を感じます。
けれどそれ以上に先生の教えは画期的で、そして私のためにしてくれていると感じられるほど温かいものでした。
先生は夜な夜な遅くまで、私のために時間を割いてくれています。
記憶水晶を何度も再生し、私に合った剣の振り方を考えてくださるんです。
本当に残念ながら、先生が考えてくれた剣の振り方がお蔵入りになることも多いですが、私にとっての一番の振り方を見つける鍵になるならと、先生は気にしていない様子でした。
戦技を再現するというやり方は驚きでしたし、このような手法を考えた先生は偉大です。
ですが私はどちらかというと、そんな風に時間をかけて私を見てくれるのが、考えてくれるのが……どうしようもなく嬉しく感じるのです。
カーネリア領から出発した私の短い旅路は、今思うと冷たい人間関係しかありませんでした。
もちろん、私が弱くて、全然連携ができなかったのが原因なのは分かっています。
けれど冒険者の方から何かを教わったことなんて、一度もありませんでした。
『冒険者っつうのは、魔物を倒すのが仕事だ。だから殺伐とした連中が多いんだよ。金で繋がっただけの集まりだし、手の内を見せきった結果裏切られる、みたいなこともあるからな』
先生はそのように冒険者を評価していました。
それならば、先生のような偉大なる方に出会えた私は果てしなく幸運だったのでしょう。
先生の目に留まり、先生の指導を受け、そして日に日に強くなることができているのですから。
目を瞑れば、これまでの先生との日々が思い出されます。
厳しく指導され、それでも上手くいったときには満足そうに頷いてくれる先生も。
先生が作ってくれた料理を二人で頂いたときの温かさも。
そして他ならぬ私のために、これまでのやり方が間違っていると注意してくださる言葉も。
全部が全部、私にとって初めてで……そしてかけがえのない宝物です。
だから私は、そんな先生に恩返しがしたい。
先生がお金を求めているなら、溢れんばかりのお金を渡したい。
これだけでは先生からもらったご恩は返しきれませんが、それでも先生の望みを叶えたい。
先生、待っていてください。
必ず強い冒険者になり、先生が満足するだけのお金をお返ししますからね。




