Lv.5 努力の結果
初めまして、VETです。
小説を書くことに関して初心者なので、ご意見・ご感想お待ちしてます。
よろしくお願いします。
ーーー体力テストが終わって数日
朝のHRが終わった直後、担任に僕の名前が呼ばれた。
「渋谷君、職員室まで来なさい」
一瞬、何かやらかしたっけ……と不安になったけれど、違った。
職員室で待っていたのは、体育教師である後藤先生、そして見慣れないスーツ姿の初老の男性だった。
「君が……渋谷翔君か。良い眼をしているな」
その人はゆっくり立ち上がると、僕に手を差し出した。
「私は神宮寺という。英星学園の理事長をしている者だ」
「え、えいせい……って、あ、あの……?」
英星学園。日本どころか、世界的にも名を知られる超名門校。テレビやネットで何度もその名を聞いたことはあった。でも、そんな凄いところの理事長が、なんで僕の前に?
後藤先生が助け舟を出すように話す。
「なに、君の体力測定の記録をね、ちょっと話してみたんだよ。そうしたら、直接見てみたいって」
「体力テストの結果を!?なんでって、しかも、直接見たいって……!?」
「そういうわけで、今日の体育の時間、特別に見学させてもらう。気にせず、いつも通りで構わないよ」
勝手に話を進める2人に。いやいや、そんなの緊張するに決まってるだろ!と思いつつ、少しだけ、嬉しくもあった。
自分のしてきた努力を、ちゃんと見てくれているという嬉しさと、自分が“選ばれた”かもしれないという高揚感。
僕は静かに拳を握った。
―――
体育の授業は校庭で行われた。
今日はサッカーをやるそうだ。全てのスポーツが苦手な僕にとって、サッカーは難しすぎる。
神宮寺理事長が見にきてくれてるのに、ついてない...
そんな翔を尻目に、後藤は話し始める。
「今日は、”あの“英星学園から、理事長の神宮寺さんが皆さんの勇姿を見学したいと、直々に来てくださいました。神宮寺さんは、俺の先輩で、とても凄い人なので、皆んな!頑張れよ!」
「はい!」
突然の英星学園理事長の登場にざわめくも、皆、同じ期待を抱いて力強く返事した。
「それじゃあまずは、Aチーム対Bチーム!」
その大きな掛け声のもと、ゲームは始まった。
チームは男女別で、名簿順に割り振られ、僕はBチームになった。
視界の隅に神宮寺の姿が見えた。後藤先生と並んで、腕を組みながらこちらをじっと見ている。
見ててください……!
「それでは、A対B、始め!」
掛け声と同時に、スキル『筋操作』を発動。踏み出しの一歩に、体の全力を込める。
一瞬、フリーになったボールを相手チームから奪い、ドリブルする。
風を切る。地面を蹴る音すら、遅れて届く。
できてる...!僕できてるぞ....!
サッカー、いや、スポーツから無縁だったはずの僕が、できるようになっている。これもレベルアップのおかげ...!
そのままの勢いで、ゴールにシュートした。
「.....うそ……マジかよ!?」
周囲がざわめく中、神宮寺がゆっくりと頷いていた。
その後も翔の快進撃は続き、12対0でゲームは終了した。
息を吐いて振り返ると、神宮寺がこちらをじっと見ていた。その目には、驚きと――確かな興味があった。
終わった後、息を切らしながらも、僕は立ったまま周囲を見渡した。
みんな、僕を見ていた。
中には拍手してくれる者までいた。
僕、本当に……変われたんだ
―――
「素晴らしい。まさかここまでとはな」
授業後、神宮寺は僕に歩み寄り、穏やかな笑みを見せた。
「まるで“化け物”だな。人の域を超えている」
「い、いえ……僕はただ、努力しただけで……!」
「それが何よりも尊い」
神宮寺は僕の肩に手を置いた。
「渋谷翔君。君を、英星学園に招待したい。見学だけでも構わない。だが、できれば……うちの“体進科”に進んでみないか?」
「体進科……ですか?で、でも、ズルなんじゃ...」
僕の口から自然に出た言葉。だが、それを遮るように神宮寺は言った。
「ズルなんかじゃあないよ。君が努力して得た結果だ。こちらが招待しておいて悪いが、もちろん、トップ校としての体裁もある。ちょっとした“推薦試験”は受けてもらうよ。」
僕は唖然としながら、それでも確かに頷いていた。
英星学園……夢のような場所。でも、もし本当に行けるなら……
―――
数日後、僕は英星学園を訪れた。
校門をくぐった瞬間、空気が違った。静かで澄んでいて、でも重厚で、どこか威厳を感じる。
案内してくれたのは、神宮寺の秘書のような女性だった。
「こちらが体進科の練習場です」
広大な敷地に、最新鋭の設備。走り込み用のトラック、室内筋トレ施設、映像分析ルームまであった。
そして、トレーニング中の生徒たちは、どこか異質な雰囲気を放っていた。
「全員、全国トップレベルの身体能力を持っています。一人一人が未来のプロなんですよ。それもトップの」
だが不思議と、恐れはなかった。
この中で……僕も...
ステータス画面をそっと開く。
名前:渋谷翔
年齢:15
職業:高校1年生
レベル:6
ステータス
知力:12
体力:25
筋力:25
感覚:12
魅力:11
運:11
不明:ー
ステータスポイント:0
スキル:
『数学理解Lv.2』『英語理解Lv.2』『化学理解Lv.2』『日本語理解Lv.2』『料理Lv.2』
『持久Lv.3』『筋操作Lv.3』『反復Lv.2』
称号:
『並以上』『挑戦する者』『諦めない者』
……まだ、足りない。もっと強くなりたい
その時、ふと耳元に聞こえる声。
【クエスト:英星学園体進科・推薦試験に挑め】
【達成条件:試験の各項目で歴代記録を超えよ】
【報酬:達成数に応じて経験値・ステータスポイント獲得・全項目達成で「??」】
「クエスト...!?面白くなってきた...ははっ、やってやろうじゃないか」
僕は再び拳を握りしめた。
“凡人以下”だった僕が、“特別”になれる道を、自分の手で切り開いていくために。
こういう設定はすごく大好きです。
たくさんの物語を読んできましたが、この作品もまず自分が面白いと思える作品にしたいと思っています。