宙に残された花びら
桜、白月、夕陽の丘で
あの手の感触だけが静脈を通ってこの胸までに
流れてくるのです
潮騒に導かれゆくように
波に攫われてしまった砂をえぐるように
夕陽が滲む波頭は紅い血のようではなくて
夕陽は明日へ好転する灯火だと
そうあなたと信じてゆきたい
誰のせいでも、なく、
運命の波にのまれたんだと
夕陽の波は花びらを透かし、
揺らめく薄影は花びらの重なり、
その手に触れたのは
桜が満開の日
風波に吹かれてそれぞれに飛んでゆく花びら
沢山の想いをもらった 沢山の
姿消えてもこの胸に深く滲みゆく、、
散りゆく花びらから、、ひとひらだけ
宙に残された
あの朧気な雪のような白月
波打際に打ち上げられた貝殻のような白月
手に取れば聞こえる
水色のメロディーが
さざ波のように伝わる
あたたかな手の感触が