前作ラスボスと対峙しました
「女王陛下!来てくれたんだな」
「お待たせしてごめんね、ケイト」
ケイトの顔がぱあっと明るくなる。本当にこの子は素直だ。
さて、道具屋をひたすら回ったから遅れてしまった。どういうわけかそれは正体を現していて、まさに襲い掛かろうとしていたところだった。
私、女王に恨みを持つオンネン。まさか実際に戦うことになるなんてね。
―かつてレイア嬢とアリナが戦った時、彼女を纏う不気味な光があった。それは紫色の光にしては鈍いものであったから印象に残っている。
その時は彼女が纏う魔力をあらわしていると思っていたが、先ほどミラさんに聞いた海蛇の纏う光の光景と似ていた。ゲームでは体を持たなかった。本編ではルートによっては人にとり憑くこともあった。
あの時のつぶやきが気のせいではないとしたら、と推察したわけだ。
「言った通りでしたね」
あとから大量の袋をもったリュカがそれを見ながらつぶやく。私が話していたから大して驚かないが、何も知らない人からしたら不気味な人ではないモノが浮いて、言葉を話し攻撃をしてくるその異様な光景は恐怖だろう。
「陛下、ここは危ない!早く避難を」
「避難して、どうなるんですか」
このまま撤退したところで、解決策は見えない、増員したところで、大した戦果を得られないだろう。
「私が目的なんだから。さっさと決着をつけましょう」
あらためてそれと相まみえる。
画面で見るのとは違う暗い光、耳に響くかすかな悲鳴、もとはずいぶんかわいらしいぬいぐるみだったのだろうが、赤黒く雑に塗りつぶされたそれは不気味さを増している。
「ほら、すぐそうやって善人ぶる…王サマなんてワレワレと大した差はないのに」
「見下して自分が高尚だと思い込む」
「たった少し優れていただけなのに」
「それだけで」
「それだけで偉くなるのかあぁああぁあぁぁああああ」
初めて会った時にはニコニコしていたそれは、ぶつぶつというつぶやきから急に豹変する。
「ああ、陛下がトリガーだったみたいだね」
「そんな悠長に構えている場合ですか!」
「うーん、でもこれで戦局は動いたと思うけど…」
ニール様を魔法陣が囲う。彼が狙うのは先ほどと同じく、オンネンの登場ですっかり忘れ去られていた海蛇たちだった。
「えっ魔法使えるようになったんですか」
「うん、オンネンくんが狂化状態になっているからね」
「それなら、話は早い!」
ギャアァァァ!
いうが早いかケイトの放った電撃が海蛇たちに降り注ぐ。自然で見るそれよりもだいぶ強いそれはその場にいる者たちを驚かせた。
「ここまでとは…」
「あれだけ能力がありながら、使えるのは雷だけではないんだよ」
彼らが話しているのを遠巻きにしながらケイトは調子が出てきたのか、あっという間に小さな海蛇たちを殲滅させた。
「我々は大きい海蛇をたたくぞ!」
オンネンが入っていない大海蛇は大したことはないだろう。属性の長達に任せても大丈夫だ。
「そんなよそ見をして!ああ腹が立つ!ワレワレ相手なら他を見ても余裕だと!?忌々しい!」
どうやら私に対しては冷静でいられないらしい。爪型の武器に魔力をこめて、切りつけるのと同時に放出してくる。
しかしその攻撃は先ほどの状態であるから、軌道が読み取りやすい。強大な魔力ではあるが、わかりやすいため避けるのも難しくはない。
「陛下!加勢します!」
そうしている間にあちらの戦況を見て任せることにした聖女が私のもとへやってきた。
「アリナ…ありがとう」
「いえ、私の方こそ」
続きを言おうとしたアリナだったがオンネンが私たちに対峙することで静止された。
「そういえばさあ、キミ…聖女、だっけ?あの女が恨んでいた」
アリナに向き合うと私に対する狂ったような態度は一変して、ふらふらしながら気味の悪い笑い声をあげる。
「そうよ、それが何」
「あの女が嘆いていたよ…なれそこないの存在の癖に王に大事にされるって、キミももしかしたら、なってたかもねえ。ワレワレのように」
「アリナ、私が攻めるから強化魔法をかけてちょうだい!」
ゲームでもオンネンはアリナを揺さぶる。私はアリナがオンネンの言葉を耳にしないように少し語気を強める。
「お前、みんなに迷惑をかけたんだろ?なんでその立場のままなの?恥ずかしいと思わないの?貴族の間でもっぱらの噂だよ?厚顔無恥って言葉知ってる?ああ、面の皮厚いんだ。嫌だねえこんな聖女。女王はお前のこと利用できるからそばにおいてるけどお前のこと本当に必要としている人間なんていないんじゃない?」
早口で、けれどもはっきりと聞き取れる声でアリナへとそれは言葉を向ける。
アリナは終始無言だった。
「お前の目的は私のはずよ!アリナを狙うなんて自分によっぽど自信がないのかしら?」
「いやあ、冷静になってさあ。ワレワレも考えたんだよ。女王を直接傷つけるよりもその周りにいる人間をやっちゃったほうが傷つくんじゃないかって」
「…下種野郎」
「女王らしからぬ発言だなあ。怖い怖い」
「アリナ、戻ってケイトの援護をして!私は大丈夫だから」、
「ざけんなよ」
「…え」
「ふざけんじゃねえよ!」
「てめえこそ誰からも必要とされてねえじゃねえか!」
(ア、アリナさん…?)
アリナの令嬢らしからぬその怒号に誰もが気のせいだ、と錯覚したらしい。
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