金髪、小麦色の君
薄着だし、抱き着いてるし、いいからだしてるし!
密着してるところからむにむにって音が聞こえてきそうだった。
リュカに抱き着いたこの女性、金髪で健康的な日焼けをしている。プロポーションもとても良いけど、ニコニコの笑顔を見せている姿は妖艶さよりも、はつらつとした美しさを感じさせた。
(…っていやいやそんなこと考えてる場合じゃない)
「離れろ」
リュカは彼女の顔も見ずに言った。表情は少しうんざりしているようにも見えるが、まだ油断(?)しれはならない。
私が彼女をあまりにも見すぎたためか彼女が切り出した。
「アア、コノ人ダネ、リュカイッテタ恋人」
「そうだ」
(なっ、何を普通に言ってるのこの人たち)
(まっ、まさかハーレム歓迎な人なの?)
「では普通に話しても良いですね。申し訳ありません、女王陛下。リュカさんに抱き着くなどして」
先ほどまでの片言口調とは違う流暢ですらすらと彼女は言った。
「申し遅れました。わたくし王立研究所クー支部のミラと申します」
「彼女はここでカフェの経営がてら、地域の天候や地域を調査しているんだ」
「……」
いやいや。ちょっと何言ってるかわかんないです。
「…ミラ、ここの一押しを頼む」
「お任せください。すぐに持ってまいります」
「いやそこまで急がなくてもいい」
「はっ。かしこまりました」
ミラさんはすぐにその場からいなくなり、二人きりになった。
「勘違い、させてしまっていたら、本当に申し訳ないことをした」
まだ理解の追いついていない私にリュカはすぐに頭を下げた。
「ミラ、さんとは…何もないの?」
「何もない」
「本当に?」
「本当だ」
「リュカは、きのうな、にしてたの?」
女々しい嫉妬じみた質問に自分自身嫌気がする。言葉も途切れ途切れになる。
それでもリュカは私の目を見てはっきりと言った。
「最初は」
「ここで俺は何も役に立つことはないと思って、何も考えずに自由時間にしようと思ったんだ。レアもきっと戦いに参加するだろうから、俺と一緒にいても有益ではないと思った」
リュカもそれを気にしていたんだ。でもリュカといても私は嬉しいし有益なのに。
「何をしようかと思ったけど、ここは俺の好きそうな本もなさそうだし、レアと行きたいところでも探そうかと思って。そう思ってたんだけど、最近ここに王立研究所が新設されたのを思い出して、向かった。そしたらなぜかカフェと併設されてて。そこで会ったのがミラだった。彼女に地域の魔物の情報を聞くために入店した」
そこを私は見たのだろう。彼は続ける。
「魔物に関しては特に新しい情報はなかったが…ひとつ気になることを聞いたんだ」
「気になること」
「魔物が現れた場所で不気味な紫色の光を見た、と」
「紫色の光」
ゲームではそんな動きはなかったように思うけど…大きいのと小さい海蛇の魔物で目は赤く輝いていたけど、紫色、むらさきか…。
「これは可能性の話であって確証はないから、敢えて言ってないんだけど」
……
リュカからの言葉に私の記憶もリンクする。確かにあの時のあれはそうだったのかもしれない。
「だったら、あの…には実は…ということがあって」
「あの」
「なるほど。ということは…ということなんだな」
「リュカさま」
「そうなのよ。だから…」
「お二人とも!」
ミラさんが気づくと私たちの前に立っていた。手に持ったお盆には綺麗な色と形のパンケーキがある。
「お取込み中申し訳ありません。こちら当店一押しのものをお持ちしました」
ミラさんが無駄のない所作で私たちの前にそれを置く。見ているだけで分かる。これっておいしいじゃない!綺麗な丸い形にちょうどいいきつね色。ベリーがふんだんに使われていて、クリームも惜しみなく乗っている。
「すてきね」
私がそう言って、リュカはようやく笑顔になった。
そんな姿を見てミラさんはくすっと笑った。
「お二人はとても仲が良いのですね。ここまで話に熱中して気づかれないこと、初めてです」
私は…少し、恥ずかしくなった。リュカを疑ったことも、彼女に良くない感情を抱いたことも。
「ごめんなさい、ミラさん。私勝手にあなたとリュカが仲良くしているのを見て…ヤキモチやいてました」
「!」
「…レア、お前」
「女王陛下、そのように頭をさげないでください」
「今の私は女王陛下ではなく、リュカの恋人として、です」
「…わかりました。謝罪を受け入れます。その代わりわたくしも、貴方に疑いを持たせるような行動をしてしまったことを謝罪します」
「いえいえ私が勝手にしたことですから」
「それなら一番は俺が謝らなくてはならないな。レア、本当に申し訳なかった」
もうなんなのこの謝罪大会は。
「ミラにも。申し訳ない」
「いいえ。わたくしのこの設定も無理があると思っていたところですから。また新たなキャラを作らなくては」
「キャラ?」
「一番最初のあの片言は設定なんだと。その方が客の食いつきが違ったようだ」
「そうなのです。次は髪型や化粧を変えて、普段の私のようにしてみます」
ここってコンセプトカフェだったの!?
衝撃の事実を知った私はパンケーキを十分に堪能してから、夜へ向けての準備を始めた。
そして…
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