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ちょっとだけ過去に触れたいと思います(彼が)


「聞いたか、近く王試験が行われるそうだ!」

「マジか!王試験ってあれだろ?生きてるうちに経験できるなんてほんとにレアな試験だろ?」


憂鬱だ。周りの人間は起きると噂されている試験に話題が集中し浮足立っている。本来の仕事の進みが遅くなっている。


「研究所の職員も何名か試験に駆り出されるらしいぞ!」

それがさらに彼を憂鬱にさせる。職員はごまんといる。選ばれるなんてとんでもない確率だ。しかしそれに選ばれてしまったら、自分の好きな研究が進まなくなる。王の勅命で選ばれるため、断ることはできないに等しい。


「ハァァァ」

大きなため息が出てしまった。どうか選ばれませんように。そう願うもむなしいことになる。






「此度の王試験への協力、感謝する」

(誰が喜んで引き受けたと思ってるんだよ)

心の中で悪態をつくも、業務に進むことにした。

王試験は王候補の聖魔力の調査や世界の魔力循環の観測をする。基本的に候補ごとに一人ずつ担当の職員が着く。候補に選ばれているからそれなりの人格者であることが多いが、人によっては雑用のようにこきつかわれてしまうことがあるらしい。


(せめて候補はマシな奴でありますように)

そうして、彼はのちの女王と出会った。

「よよよよよよろしくお願いします。レア・アベラールと申します」

「…よろしく、おねがいします…リュカ・ワトーです」

初めて会った時の彼女はとても緊張していた。彼の顔もまともに見られなかった。

カーテシ―をしたようだが、どうにもぎこちなく貴族令嬢とはいいがたいものだった。


(大丈夫か、あんな奴で…)

心配になったが、それは杞憂だった。

「おい、リュカ。すごいなお前の担当は」

授業も魔法の才能も、育成も一生懸命だった。そして才能もあった。本当に彼女は寝ているのかと働きづめの自分が心配になるほどだ。

家からの命令や責任感はあまり感じられなかった。むしろこの環境を楽しんでいるようだった。

そんな彼女のことが気になり話を聞いてみたいと思った。


「私は、この世界が好きなんです。この世界にいるすべてがいとおしくて仕方ないんです」

照れながら、彼女は言った。何を言っているんだろうと思ったがどうやら真実らしい。そんな聖人がいるものなのかと驚いた。


王試験に対するそれが義務的なものから、彼女にならと協力するようになった。

彼女は少しずつ心を開いてくれて、贈り物をもらうようになった。

それが自分の好みのものが多く、彼女は自分のことをよく見ているんだと感心した。

休みの日にも、彼女が図書館に行きたいというので付き合ったり、帰りにお茶をしたり「デート」と言われるものをするようになった。


彼女は常に彼の好きな話題を提供した。また彼の得意なことを質問して教えを乞うたり、些細な表情の変化にもよく気づいた。



彼が彼女を意識するのは間もなくだった。

意識してからは、彼女の将来を案じ何も行動に起こすことはしなかった。

時には参加したいはずの彼女の誘いを断ったり、苦言を呈したりした。

(気づくな、俺にかまうな。お願いだから…)

祈るように、すがるように、自室に帰ってから何度も思った。


試験で彼女が選ばれ、晴れてレアが女王となった。

(これでいい。おめでとう)

心の中で彼女を盛大に祝った。嫌だいやだと思っていた試験だったが、彼女のおかげで楽しい思い出が作れた。この思い出を胸に生きていけるだろう、と思った。



「リュカ、様。わたし、あなたが好きです!」

「…」

彼女からその言葉が出た時は、苦しくなった。

「何故そのようなことを。貴方は女王になったんですよ。そういうことにかまけている時間はない」

「女王になったら、誰かを好きでいてはいけないんですか」

「…業務に差支えが生じます」

「差し支えなかったらいいんですね」

「そういうことではなく」

触れてくれるな間違いだったと、勘違いだったと自分から去ってくれと願った。そのために言っているのに。彼女は嬉しそうに自分が隣にいることを望んでいる。

…望んでくれている。



「私は欲張りなんです。前にこの世界のすべていとおしいと言ったでしょう?だから、女王の仕事もあなたも欲しいんです」

「どんな理論ですか」

「ねえリュカ。女王命令です、私と一緒にいなさい」



「お前が離してくれって言っても離さないからな」

彼女に聞こえないようにつぶやいてから、彼女を腕に閉じ込める。

ああ、こんなに小さかったのか。こんな体で試験を乗り越えたのか。


「俺もお前を愛している」








◇◇◇





夢を見た。彼女との出会いの夢。

(あの頃は良かったな)

ぼうっとした頭はそんなことを考えた。今の生活自体は不満があるわけではない。会いたいときには都合をつけやすいし、自分ばかりではなく彼女も会いたいと思った時に会える。言葉を交わすのが楽しいし、彼女のことを愛おしいと思う。



しかし。

ここ最近は自分の無力さを痛感していた。



閲覧いただきありがとうございます。

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