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「彼女」を知る



「え…陛下はこのゲーム遊んだことあるの?」

「アリナ嬢はとわきらやったことなかったのね…だからか」




「………」


侍女のクロエは私たちを見てとても驚いている様子。つい先日まではこういったことが起きるとは誰も思わなかっただろう。ただでさえ、女王という立場、こういった砕けた口調をしてくる人間はとても限られてくる。


ニール様の修行は終盤を迎えた。彼の計らいで一緒に修行することになった私はアリナ嬢へ接触を試みる。彼女は人見知りなのか、最初こそそっけなかったが今ではこうして前世の話をできるまでになった。


「わたしは、友達がやってたのを見ただけ、だから…」

「そっかあ、お友達は誰推し?」

「へ、ヘイムダル様…」

「ヘイムか…いいよね~ヘイム、わかってるね~お友達」

私はというと公にとわきらの話ができてとても嬉しかった。知らないと言っているが私の質問に考えながら答えてくれたり、彼女がお友達の話をしているときの表情が優しいものだからなんだか私も幸せな気持ちになった。

この方向で話を進められなかったら、こんな光景はなかった。いろいろあったけどこうなってよかった。まだ、やらなければならないこともあるが。


「あ、の…陛下」

それまでにこやかに笑っていた彼女はうつむいた。はっきりと表情が見えていないが悲しそうに見える。


「?どうしたの?」

「今まで…申し訳、ありませんでした。私はひどいことをたくさん、して」

「…」

目は閉じていた。頭も下げて、福の裾をぎゅっとつかんで、震えていた。

その様子から自分のしてきたことを反芻し、後悔しているのだろうと予想できる。


彼女は若いうちに儚くなり、転生したのだろう。前世での楽しい経験を思い出として消化できず、ふさぎ込んでしまった。そうしたところで彼女に利用されてしまい、たくさんの人たちに醜態をさらしてしまうことになって。今でも彼女はその魅力から社交界に呼ばれるが、彼女を持て囃すのは彼女の見てくれや地位を狙う者だ。それ以外は彼女を遠巻きに見て、笑うのだろう。

面白い独り相撲を見せてもらった。喜劇を演じる芸人にでもなったらどうか。自分が女王と錯覚した気分はどうだ?などがルドルの耳にまで届いたらしい。貴族は暇になるとうわさの的を探すのだろうだ。そして中にはさらに自身が情報元になろうと、その噂の本人に接触し、警戒を解いてネタを探すのだ。

(貴族の恥ずべき点だ、とルドルは嘆いていたけど、どこの世界の貴族も似たようなものね)



私が聖女の任を解かなかったのは、彼女をそばに置くことで好奇の目にさらされないため、噂を耳にするのを少なくするためでもある。

そうしなければいけない気がした。はじめはリュカを取られたくない一心で調べていたことだけど、私はアリナちゃんではない、彼女を知ってしまったから。

「謝罪を受け入れます。あなたも険しい道を通ってきましたね」

「私は前世のあなたがわからない。でもあなたが素直で純粋なのは伝わる」


「女王レアではなく私として、アリナ嬢ではないあなたに会えて良かったよ」



彼女は下を向いていた。顔は赤い。瞳はうるうるしている。





「何を感動しているか知らないけれど、修練中にそんな感傷に浸れるなんてずいぶんだね」

「……あ」

(わーすみません。まさかアリナ嬢からそういわれると思わなかったからいろんなこと考えているうちに忘れてました)

「すみません、ニール様。アリナ嬢は悪くないんです!私が泣かしました!」

なんだか語弊のある言い方かもしれないけど、アリナ嬢が責められそうだからとっさに言ってしまった。相変わらずニール様に問い詰められると慌ててしまう。

「いいえ」


「私が勝手に泣きました。陛下は何も悪くありません」

(アリナさんん!)

さっきまでのうれし泣きはどこへやら、いつもの冷めたアリナ嬢がしれっと挙手したうえで発言している。

「誰のせいで泣いたとかそういうのどうでもいいんだよ」

「休憩以降も影響を及ぼすことはしないでもらいたいんだ」

そう言って、ニール様はアリナ嬢へハンカチを差し出した。目を押さえたアリナ嬢へさらにニール様が告げる。

「君の名誉は必ず挽回される。君の手によってね」

「ニールさ、ま…」

(そういう詩的な表現が「乙女ゲームの男性」って感じだよねえ)

この時のんきに笑っていた私、今までの経験から笑ってる場合ないと気づきなさい!


「それじゃあ、再開しようか?僕のもとで鍛えられているんだ。伝説と呼ばれるほど最高の聖女と女王になろうじゃないか」

ニール様は残酷で極上の笑みを見せた。言っていることは良いことなのだが、それに近づくのにどれほどのことをしなければならないのだろう。私もつられて笑ったが、身震いがした。




そのあとの様子はまさに阿鼻叫喚の地獄絵図だったとクロエは慄いていた。





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