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リリィとユリウス

リリィとユリウス〜平行世界の私が様子を見に来た~【好感度SS】

作者: HOT-T

これまでのどのシリーズよりも夫を『変態』呼ばわりしている現行世界のリリィですが無茶苦茶彼を愛しています。


「えーと、これはここに置いて……」


 今、私は結婚してからようやく見つけた新居で引っ越し作業中だ。

 腐れ縁から結婚した最愛の夫ユリウスは今買い出しに行ってもらっている。

 片づけなどが苦手な人なので大まかなレイアウトだけ話し合って後は私が片付ける。

 腕力も私の方が上なので適材適所という奴だ。


 そんな中、不意に空間に歪みが出来て一人の女性が目の前に降り立った。


「よし!ようやくたどり着けた……」


 女性が呟いた。

 急に現れた事も驚きだが何よりも驚くべきは其の見た目。

 目の前に居るのはどう考えても……


「えーと、えっ、私!?」


 毎日鏡の前で見ている自分と同じ顔。

 まさかモンスターの擬態!?


「落ち着いてよく聞いて。私は『平行世界』のあなたよ。あなたに危機が迫っているの!!」


「平行世界……なるほどね」


 つまり彼女は私であるものの違う人生を歩んだ世界からやってきたというわけね。

 理論上は知っていたけど本当に存在したとは……


「理解の速さは流石私と言った所ね。話が早くて助かるわ」


 平行世界の私は語り出す。

 彼女はかつてアリアンロッドアカデミーという学校に在籍していたらしい。

 アリアンロッドアカデミーと言えば独立地帯にある名門校。

 かつては私達姉妹もそこへ留学させようかという案が出たらしいが結局は地元の学校へ通う事となった。

 そこで私は心に深い傷を負ったのだが同時に支え続けてくれている夫と出会うことも出来た。 

 

 さて、平行世界の私はアリアンロッドアカデミーで平行世界を覗く実験とやらを行ったのだが見事に失敗。

 結果として私とある程度関係性の深い男性が一時的にあちらの世界に迷い込んだらしい。

 そして問題はその男性が私を好いていて尚且つ変態だという事だ。

 うーん、それって物凄く心当たりのある変態ね。


「私は独自に研究を続け遂にこうやって平行世界に干渉する術を編み出したの。違う人生を歩んでいるとはいえあなたも私のひとりである事は変わりない。だからこうやって忠告を……」


 ふと、平行世界の私が壁に掛けられている肖像画を見て叫ぶ。


「ああっ、こ、こいつよ!!」


 それはユリウスと結婚した時に画家を呼んで描いてもらったものだ。

 椅子に座った私と傍らに立つユリウス。

 重ねられた手の指には指輪が光るというよくある構図なのだが私達にとっては至上の幸福が詰まった絵である。

 ちなみにこの時『家族画ならば正装を』と脱ごうとしていたのでドラゴンスープレックスを叩き込んで黙らせた。


「こいつよ!こいつが!この変態が狙ってるの……ってちょっと待って。これってえっとあの……」


 まあ、予想はしていたけどね。


「えーと、その変態だけど……私の夫よ」


 その言葉にがくりと平行世界の私が膝から崩れ落ちた。


「あぁぁぁぁぁぁ!お、遅かったぁぁぁ!!平行世界の私が変態の毒牙にぃぃ!!」


「失礼ね、まあ、彼が変態だという事実は認めるけど」


 彼には脱ぎ癖がありそれを『正装』と称している。

 紛れもない変態だ。 


「じゃあ何で結婚したの!?普通に考えておかしいでしょ!?変態よ!?」


「それは……」


 改めて肖像画を見る。

 重ねられた二人の手。これの意味するところを考えると嬉しさで涙がこみあげてくる。  

 彼と出会う前の出来事で私は男性恐怖症になってしまい家族以外の男性に触れられると恐怖で身体が強張ってしまう。

 戦闘が得意な家の生まれながら実戦にはほとんど出ずに事務処理ばかりしているのもこれが原因。

 こんな感じだからもう誰かを愛するなんて出来ないと思い諦めていた。

 

 そんな私の傍に居続けてくれた変態が彼だ。

 こうやって手を重ね、穏やかな表情の私。

 この絵は彼と本当に『家族』になれた証なのだ。


「彼は確かに変態だけど私を救い出してくれた『光』だったから」


「…………今、幸せなの?」


「ん。勿論。私は人生を諦めていたけど彼はそんな私とずっと向き合ってくれていたから。自分の気持ちに気づくまで結構時間がかかってしまったけど、こうやって一緒に居られるのは幸せよ」


「そう……どうやら彼は変態だけど本当にあなたを大切に思ってくれていたということね。少し羨ましい」


 私は平行世界の自分に尋ねる。


「あなたはどうなの?多分男の人の事、怖くないのよね?」


「ん。そうね。私は別に何かにトラウマは持っていない。だけど、今の所彼氏だとかそういう特定の相手は居ないわ。戻った世界でこの変態を探してみるのもいいかもしれないわね」


「そうね。歩んで来た道は違うけど元は同じだから。彼の名はユリウス。旧姓はモンティエロよ。いい人だけど変態だからそこは気をつけてね」


 平行世界の私は安堵の笑みと共にゆっくりと消えていく。


「それじゃあ、私は元の世界に戻るから。幸せにね、別の世界の私」


 その姿が完全に消えた数秒後。


「ただいまー。頼まれたもの買って来たよ」


 夫が帰って来た。

 彼にねぎらいの言葉をかけ、私は彼にぎゅっと抱き着く。


「え?ど、どうしたんだい?何かいい事でもあったのかい?」


「ん。そんな所。ありがとうね、ユリウス。あんたに会えたことが、私の人生で一番の幸せよ」



~おまけ~


 平行世界のリリィがどうなったかと言うと……


「実は平行世界の私が結婚した男性をこっちの世界でも探して会ってきたのよ」


 姉のケイトは肩をすくめる。


「あんたも物好きね」


「どこかのご令嬢と婚約していたけど変態だと婚約破棄をされた人だったわ。というわけで早速食事に誘ってみたの!」


「え、ちょっ……あんた何考えてるのよ!?相手は変態よ!?」


「大丈夫、平行世界の私もその人と結婚したらしいからきっといい人よ!!」


「目を覚ましてぇぇぇ!あんたがデートしようとしているのは変態だから!!」


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― 新着の感想 ―
[良い点] 愛は盲目ということでしょうかw 並行世界の人間とは何かしらのシンパシーを感じる要素があると思うので、 変態であっても同じ人を好きになるのは運命を演出できるなと感じました。 面白かったです!…
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