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リュウノクニ  作者: sinya
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マノクニの章~①

ふと、上に目を向ける少年。

黒い空と薄暗い周囲。

遠くからは雷鳴と稲光が響き続ける。


見た目の風貌と印象から

一定の幼さを残す少年が一人たたずむ。


人間の年で言えば10代前半だろうか。


小さな体と印象的な深紅の瞳。


綺麗に整ったその顔は

一見すると性別を分からなくする。


肩まで伸びた長い黒髪。

また黒一色のシンプルな服。

周囲の邪悪な景色と溶け込んでいる。


無表情に空を見上げるその姿が

どこか儚げで、気品さえ感じさせる。


草木は枯れ、生命を感じさせない。

荒れた大地がこの風景。


場違いにも見える少年は

いつまでも黒い空を見つめ続け…


そしてゆっくりと目を伏せて

思いを馳せる。



(空は嫌いだ。

不気味な黒い空、いつ見ても気味が悪い。)


(あぁ…そういえば、

あの本に描かれた晴天、綺麗な青い空。

本当にあるのかな…本の幻想だろうか。

もし、あるのなら、いつか見てみたい。

…まあ無理だろうけど。)




少年はゆっくりと瞳を開ける。


その視線の先。

立ち竦む兵士4人。


彼らからは恐怖という意識しか感じられない。


理由は明確だ。


彼らの周囲には、[何か]に押し潰された死体の山。

数限り無く、それが点在している。


そう。

全て、この少年が作り上げたものだ。


その場の兵士達は悟る。

いずれオレ達も殺されるだろう。

敵うはずがない。


特異な存在の少年。

無表情なその顔が黒い空と同調し、

さらに不気味さを増す。


「もう無理だ…殺される…っ」

「五万の兵がほぼ壊滅なんて…」

「降参だ!助けてくれ…俺たちは…っ」


絶望を目の前に

少しでも許しを乞う兵士達。


そんな言葉など気にもせず。

重い気配を纏い、近づく少年。


兵士達と少年との距離。

およそ50m。


兵士達は瞬時に感じた。


[ 殺される! ]


一目散に散らばり逃げ出す。


四方へ散る兵隊達を見ながら、

何の気にもしない少年。


無我夢中に逃げる者、

後ろを横目に逃げる者、

足の震えに体勢を崩し、倒れながらも逃げる者。

泣きながら叫び続けて逃げる者。


これまで休まず進軍してきたのだ。


彼らに疲れはあれど

殺される恐怖には敵わない。

ひたすら逃げ行く。


一方の少年。

静かに歩みを止めた。


その直後、

少年の身体が紫色の光に包まれる。


徐々に地面が揺れ動き

紫の烈光を纏う。


そして静かに呟く。




「止まれ」





向かう先無く、ただ逃げ続ける兵士達。


少年との距離は徐々に開いていく。


「大丈夫だ!このまま逃げ切るんだ!」

一人が言う。


微かに見え始めた生き残る道。

笑みがこぼれ、緊張が緩まったその刹那

ピクリとも体が動かなくなる一人の兵士。


一人だけではない。

各々散る兵士達が一斉に異変をきたす。


彼らは苦しむことも声もだせず

ましてや、この状態を疑問に思うことすらなく

その場で『止まった』のだ。


遠くで『止まった』兵士達四人の姿を気にもしない。

纏った紫は消え、少年はそのまま空を見上げた。


荒れた大地にはただ一人の少年。

無表情のまま、静かに深紅の瞳を閉じた。



時を見計らったかのように

空から白い鳥が大きな翼を広げて降り立つ。

大きさは少年の倍以上はあろうか。

周囲の景色とかけ離れた真白に輝くその姿。

少年の眼前へ立つ。


「さすがはリュウオウ様!

ようやく片付きましたな!」






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