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第六話(1)


 その大きな平屋の建物からは大きなかけ声が聞こえてきた。

 

 一斉に床を踏み鳴らし、地面が割れるような掛け声があたり一帯の空気を震えている。王都では闘技場の反対に位置するところに元『月の勇者』パーティ、アリシアが主をしている道場があった。


 闘拳大会をトリヤと見た次の日、レイはそこを訪れていた。


 王都には似つかわしくない、木造づくりで瓦という屋根をしている。正面から見ると、に大きく何とも堂々とした構え方をしている。入ることが憚られるが、レイは開いている扉から目立たないように入った。


 レイの訪問に気付く門下生はいない。自分たちの練習に集中しているようだ。レイは練習の邪魔をしないようにアリシアの姿を探した。その時だった。レイの背中に優しく拳が置かれる。


「残念、あんたもうやられてたね」

「……相変わらずだね、アリシア」


 その正体はここの道場主、アリシア・クガだった。


「気配を消し方がなってないね、レイ。うちの道場で修行していく?」

「い、いや、遠慮しておくよ……」


 アリシアはパンパン、と手を叩いた。すると門下生は自分たちがしていた練習をぴたりと止め、アリシアにならった。


「あたしは客人とちょっと出てくるから、みんなは組手しておいて!」

『押忍!』


 約三十余りの男たちが一斉に声を上げると、レイは思わずその迫力にのけぞってしまう。アリシアはそれを見て、にっしっし、と笑っていた。


 アリシアは行きつけの店があるからと、レイを案内する。道場から少しだけ歩いところにあるその店は、これまた道場と似たような作りで、王都にはそぐわない。アリシアは引き戸を開け、店の名前だろうか、それが書かれている扉の前にかかっている布を手で軽く払い、隠れるようにその店に入っていった。


「……らっしゃい」


 カウンター越しにいる男は、精悍な顔付きをしている。おそらく料理に髪の毛が入らないように白い帽子もかぶっていた。少しだけこわもてな彼に、レイは委縮した。


「悪いね、大将! 昼間っから来ちゃって!」

「……いつでも歓迎だよ」


 アリシアとレイは、案内された席に座り料理を待った。何が来るのかはわからない。アリシアがお任せで二人分の料理を頼んだのだ。


「昨日、ヴェルクトから話を聞いたよ。魔種が芽吹きかけてる人がいるかもしれないって」

「……そうなんだ。少しだけまずいことになるかもしれない」

「魔種が芽吹くのは一瞬だかんね。芽吹き魔花が咲くまで一切の気配がなくなるし、本当に厄介なことになっちゃった」


 大将から料理が届く、小鉢に入れられた料理はとても腹を満たすようなものではなかった。


「お通しっていってね、お酒と一緒に軽くつまめるものなんだよ。メインじゃないから安心して!」


 面食らっているレイに、アリシアはにっしっしと笑い、瓶のようなもの『とっくり』と呼ばれるものに入っているお酒を小さなコップでくっとあおった。


「ヴェルクトもそうだけど、本当にお酒が好きなんだね。パーティを組んでた時は毎日飲むとか、そんなイメージなかったのに、まさか昼間から飲むくらい好きだなんて」

「別にそこまで好きじゃないよ? ヴェルクトは本当に好きかもしれないけど」

「えっ? じゃあどうして今日は?」


 アリシアはゆっくり、小さなカップをテーブルに置く。


「だって、しばらくお酒も飲めなくなりそうじゃん」


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