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「我が方の攻撃成功! 敵艦隊被害甚大です!」
通信士官の報告に、バアム男爵艦隊旗艦『ブロッシュ』の司令部は沸いた。
「流石ウォートホッグ准将。最適のタイミングだ」
クーへはそう自分の自慢の部下を褒めつつ、この作戦が提案された時のことを思い出していた。
* * *
「ところで当主様。バアム男爵陸軍には、どれ程の戦力がありますか?」
「ウォートホッグ准将、それは作戦に関係あるのか?」
場違いにも思えるゼロの質問に、私は尋ねた。
「ええ。この作戦の要とも言えます」
「そうか」
なら、言った方が良いだろう。ゼロは、真面目な場面で冗談を言うような人物では無いのだ。
「対空レールガン五千基、対空ミサイルポッド一万基、そして歩兵が五万人だ」
「なる程、ありがとうございます」
ゼロはそう頭を下げた。
「これらの陸軍は、敵艦隊が惑星やステーションに降下してきた時の為の防衛戦力ですが、これらの使用は防衛戦に限る、との法は帝国法にも、バアム男爵領法令にもありません」
「つまり、陸軍戦力を宇宙に展開すると。そういう訳だな?」
「その通りです」
「場所は?」
「ワルツ回廊の小惑星帯です」
「勝算は?」
「八割はあります」
「……なるほど」
クーへは、ゼロの案をすぐさま採用したかったが、一応部下に意見を聞いておきたかった。
「他に案はあるか?」
だが、誰もが黙っていた。ゼロの案が最善だと、直感したからだ。
「……よろしい。ウォートホッグ准将の案を採用する。準備にかかれ」
「「はっ!」」
* * *
ウォートホッグ准将の案は大当たりを引き、連邦軍四万隻は大混乱の極みにあった。
「どこからの攻撃だ!?」
「前衛はやられたのか!?」
「て、撤退だ!」
「何止まっているんだ前進しろ!」
四万隻、今は減って三万隻強という数の大艦隊が統制を取れなくなればどうなるか。その良い例が、ワルツ回廊にて繰り広げられていた。
前衛は勝利は間近だと死兵に突撃して返り討ちに遭うか撤退しようとし。中衛は食い破られて虫の息。何も知らない後衛は勝てる戦の為に前進を続けようとして味方とぶつかる。これ以上何もしなくとも、バアム男爵艦隊は勝てるだろう状況だ。
だが、バアム男爵及びウォートホッグ准将は手を緩めなかった。
「戦艦、一斉砲撃!」
バアム男爵は混乱している連邦艦隊前衛に、温存していた戦艦の砲撃を叩き込む。これが切っ掛けとなり、連邦軍第八艦隊は壊走を始める。
「砲撃の手を緩めるな!」
逃げてくる連邦軍第八艦隊、及び前進を続ける間抜けな連邦軍第九艦隊後衛に、ウォートホッグ准将率いるバアム男爵陸軍はありったけの砲弾を叩き込む。それと同時に。
「発進せよ!」
僅かに存在するバアム男爵軍防空戦隊、つまり戦闘機部隊が、小惑星帯を抜けて第九艦隊の後ろから奇襲をかけ、連邦軍の混乱を助長する。
こうして自軍の残骸に囲まれた連邦軍グリーンウッド星系攻略艦隊は『必勝の戦闘』で大敗。撤退することも出来ずに、一万隻余りが鹵獲され、後は轟沈することとなった。
進攻軍の五分の一を失うというあまりの大敗北と、補給の破綻した連邦軍は撤退することすらままならず、『ワルツ回廊の戦い』により艦隊を集結する時間を稼げた帝国軍の反撃を前に殲滅された。
帝国と連邦の戦争は、再び振り出しに戻ったかに見えたが、連邦の損害はあまりにも大きかった。
続きを書く予定はありません。
私に戦争描写は早いと思った。