勇気の先に
今日は四月最後の日。
心愛様も休み。
私の、人間の姿を見せるチャンス。
朝9:00。
心愛様が起きた。
「んー、おはよう、フォレスト」
私はベッドから降り、今日こそ人間の姿を見せると心に誓い、いつものように息を吸い込みました。
「すぅー」
「フォレスト?」
身体中に力が湧き上がってきた。
そして、少しずつ身体が人間の姿になっていく。
「えっ?フォレスト?どうした?」
私は人間の姿になった。
慌てる心愛様。
「なんで.........」
心愛様は言葉を失ってしまいました。
私はゆっくりと口を開いた。
「心愛様、私はもともと、人間の姿になれたのです。 今まで黙っていてすみません」
心愛様は目を大きく見開いて言った。
「これは、夢?」
「いいえ、夢ではなく、現実です」
心愛様はその場に固まって動かなくなってしまった。
これが普通の反応なんだと思い、私は恐る恐る聞いた。
「怖い...ですか?」
すると、思いもしない返答が返ってきた。
「美少女じゃん!」
「えっ?」
私はよく分からなかった。でも、心愛様はなんだか嬉しそうに言った。
「普通に美少女じゃん!夢みたいだよ!」
私は嬉しかった。嫌われるどころか人間の姿の私を歓迎してくれている。
「あ、でも服着なきゃ!尻尾は無いな。ちょっと待ってて」
そう言って、心愛様は自分の服を持ってきた。
「俺も結構小柄だけど、フォレストにはちょっと大きいかな?」
心愛様は私に白のパーカーと黒のジーパンを着させてくれた。
「ありがとう、ございます」
「いやー、びっくりしたわ。 今日シュウ兄さんに挨拶行かなきゃなのに」
そう、私は明日から、心愛様が仕事の間、鴨頭さんの動物病院で面倒を見てもらう事になっている。
私は少し混乱しながら言った。
「私、迷惑では?」
「そんな事ないよ。 シュウ兄さんなら大丈夫!」
心愛様はそう言ってくれた。でも、そもそもこの状況は普通ならありえない。心愛様の順応力の速さと優しさの現れなのでしょうか?
心愛様は私の頭を撫でる。
「かわいい猫耳だね」
「ありがとうございます」
「なんだか妹みたいで嬉しいよ。 よし、シュウ兄さんにもこの姿を見てもらおう」
私は怖かった。心愛様は嬉しいと言ってくれたけれど、修平さんが同じ反応をするか分からない。
心愛様は優しい感じで言った。
「大丈夫! シュウ兄さんの方がなかなか凄い経験してるから」
「あ、はい」
「それと、フォレストは俺の腹違いの妹でハーフって設定ね。 フォレスト・アンって名前でどう?」
「分かりました」
心愛様はあっという間に私のプロフィールを作ってくれた。
「一応これ掛けて」
私にサングラスを渡してくれた。
心愛様は物凄く用意周到な人で驚いた。
私一人の為にここまでしてくれる。
そして、動物病院に行く為に心愛様は私の手を繋いでくれた。
私は物凄く嬉しかった。
(大好きな人と手を繋げるなんて幸せ。)
私はとにかく嬉しくて、そのまま抱きつきたいと思っていた。
(今は我慢。)
二人で並んで歩けるのも私にとってはご褒美です。
初めて人間の姿を見せたフォレスト。
嫌われずに受け入れられて嬉しそうです。
次話は、他の人にも受け入れて貰えるのか?という気持ちを描きます。
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