いざ対面
一体、これはなんなのだろうか。
スコットは目の前で繰り広げられる光景にただ唖然として見ていることしか出来なかった。
イグニスがスコットを迎えに来る前にグレンの迎えが先にやって来たために、グレンがまだ帰らないと駄々をこねているのだ。
「帰りますよ。ほら、グレン」
「いーやーだ。今帰ったらなんのためにここに来たのか分かりゃしねぇよ。どんだけ協会に頭下げたと思ってんだよ」
師匠の言葉を他所にグレンはその場にあぐらをかいて座り込む。
イグニスに会うまで帰らないという意思からの行動だ。
交流会のやり取りからグレンが、どれだけイグニスに憧れているかは伝わってきたものの、それはやはり信じられないというべきものだ。
厄介者扱いが常のあのイグニスに憧れているというのは。
「筋金入りだな」
「ねー、あそこまでのは初めてだよね」
スコットが避難所として逃げた先、ウォルスとセルジュはのんきにそんな会話をしていた。
イグニスに会うためだけに、スコットの交流会に参加させてくれと何度も頼みこんできた熱意も本物ということなのだろう。
まぁ、セルジュはスコットと仲良くなることと条件は出しておいたが。イグニスやスコットの心配はしているのだ。
「あ、師匠」
迎えにきてくれたイグニスを見かけてスコットが呟けば、その声をしっかりと拾っていたグレンがイグニスの前まで駆け寄る。
駆け寄って土下座、いや、五体投地とでも言おうか。とにかく頭を地につけた。
突然のことに状況の理解できないイグニスは、この状況をしっかりと分かっているであろうセルジュとウォルスに視線だけで説明を求めた。
「こいつはグレンというのだが」
「イグニスの熱烈なファンみたいでね。今日会えるの楽しみにしてたんだって」
住所などが分からないとなると確実に会うためにこの交流会しかないと、魔法協会に何度も頭を下げてきて、グレンに根負けしたのだとセルジュは笑う。
事情は分かったが、それにしても扱いに困るのでやめて欲しい。
「あー、もう。申し訳ありません、イグニスさん、お弟子さんも。昔、イグニスさんの噂を耳にしてからずっとこんな感じで」
グレンの師は心底申し訳なさそうに謝ってくるが、グレンは弟子にしてくれと言い出しかねない雰囲気でイグニスを見上げている。
「噂?」
「あ、はい。噂っていうか事実ですけど、無傷で年上魔法使いに勝ったりしてますよね。トアルさんのことや絡まれたりで」
トアルがいじめられていたりで、イグニスが間に入り相手を返り討ちにしたとかその辺の話らしい。
グレンの師はそれを何度か見ているようで、噂が事実だと知ったグレンはイグニスのことをかっこいいとファンになったということだ。
どうすればいいかと困っているイグニスの肩をちゃんとセルジュが叩く。
「せっかくだし、お茶の一杯でも一緒に飲んであげたら?一応、スコットと仲良くは出来てわけだし、交流相手を増やすのも師匠の仕事だからね」
「それはそうですけど」
確かにグレンであれば交流授業など喜んでやってくれるだろう。師匠もおそらく押し切られる気がするし。
数えるほどしか弟子同士の交流を持たせられていないイグニスからしてもこれは繋がりを増やすチャンスでもある。
息を吐いたイグニスはセルジュの提案を受けて、お茶一杯分の時間だけグレンに付き合うことにした。
ありがとうございました。




