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センとユーリ

「セン様もご一緒でしたか」


 突然やってきた来客はかなり珍しい人物で、ただただイグニスは唖然とした。

 彼がここに来ること自体予測はしていない。


「少々時間が空きましたところ、セルジュ様からご提案頂き参りました」

「そうなんだ」


 ユーリは一部の隙なく席に座って、イグニスが出したお茶をまるで富裕層の立ち振る舞いで飲んでいる。


 実際、王族相手に働いているのでそれはおかしいことではないのだが、ユーリは機械的とでも言うべきほどに癖がない。


 こうして並んでいるところを見ると、さすが双子というべきだ。顔はよく似ている。

 ここでスコットにはある疑問が浮かび、質問をしてみる。


「ユーリさんは魔法使いじゃないんですよね?」

「はい。ごく普通の人間です」


 双子がよく似ているというのなら、2人とも魔法使いであってもおかしくないと思うのだ。


「魔法使いは血筋で生まれるわけじゃないから」


 スコットの疑問にセンが答える。

 解明はまだされていないのだが、魔法使いは遺伝などと関係なく突然生まれてくるものらしい。

 だから双子であっても違うと言う。


「ですが、弟と同じように魔法使いとして生まれていればと悔やむことはあります」


 魔法使いになりたかったと言うのは珍しい。

 忌み嫌われる存在としてだけじゃない魔法使いを知っているにしてもだ。


 その言葉にムッとセンが反応をする。珍しく怒っているようだ。


「そんなこと言って」

「忌み嫌われるのは同じでしたら、どこにいようと変わりません」

「嫌われる?」


 ユーリの言葉の意味を図りかねていると、ユーリは淡々と口にする。


「私たちの故郷では、双子というのは不吉の象徴でした」


 そういう話は各地に点在しているので驚くことはない。ただ、大抵は男女の双子の場合が多いのだが2人の故郷では双子自体が忌み嫌われていたという。


「本来なら後から産まれた方を処分すると言うのが故郷の風習でした」

「厄介なことに僕は魔力を持っていて、そうすることが出来なかった」


 魔法使いは死ぬ間際に呪いを残すなんて話は世界に伝わる話で、だから誰もむやみに手を出さない。死が間近に迫ると魔力が自己防衛の働きをするためであり、産まれたばかりのセンも処分直前に何かが起こったらしい。


 そのため、センは牢屋の中でかろうじて生かされ、ユーリは故郷で疎まれてながら暮らしていたらしい。

 そして、センの方は偶然通りかかった魔法使いに保護されて、昨日のセンの話に繋がるようだ。


 ユーリはだからこそセンとともに魔法使いだったらと言う。

 センやイグニス、スコットのように気の置けない家族と呼べる繋がりをずっと望んでいたと。


「なら、協会で働く?」


 冗談めかしてセンが尋ね、ユーリはその誘いは大変嬉しいのですがと断る。


 今はユーリにも居場所がある。

 しかしユーリの立ち位置は少々厄介で、それを分かっているユーリは笑って言葉を付け足した。


「ですが、クビになった際は頼らせて頂きます」

「うん、そうして」


 ユーリは自分たちの過去の重さにあたふたするスコットを見て、私にとって魔法使いは幸運の印だと告げる。


「魔法使いが幸運の、印?」

「ええ。もう二度と会えることがないと考えていた家族と再び引き合わせて下さり、いい縁まで繋いで下さった」


 センが魔法使いだったからこそ、今があるのだとユーリは言う。


 続きを聞こうとして、そこにセルジュがやってくる。ユーリを迎えにきたようだ。

 今日は珍しく仕事中だとユーリを連れてすぐに帰って行った。


 2人を見送っていたスコットはイグニスを見上げて呼んだ。


「……師匠」

「なんだ?」

「居場所があるっていいことですよね」


 魔法使いだと分かったとき、自分は世界の中で独りぼっちなんじゃという孤独感。

 きっと、ユーリも同じようなものだったのではないかスコットは思った。


 だから、スコットは改めて思う。

 ここがどれほど大切な場所なのかを。

 

 優しくスコットの頭に手を乗せたイグニスはそうだなと短く返すと、しばらくスコットと一緒に何も見えなくなった道を眺めていた。


ありがとうございました。


ユーリは魔法協会で働くことになったとしたら、トネリコがかなり喜ぶのではと思います。

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