協会育ちの魔法使い
久しぶりのセンに、スコットは本来あるはずのないシッポをブンブンと振りながらセンを歓迎した。
時折、師匠よりもセンに懐いているように見えるのはきっとイグニスの気のせいだろう。
朝からセンについて回りはしゃいでいるスコットはルピナスが来ていた時のこと話しながら、その時に聞いた話を思い出してセンに尋ねた。
「……それで、セン師匠が協会で育ったって」
「そうだよ。って言っても初めから協会で育ったわけじゃないけどね」
すんなりと頷いて肯定をしたセンは和やかに笑うが、話を知っているイグニスからすればよく笑えるといったふうだ。
「そうなんですか?」
「もちろん。まぁ、ほとんど記憶もないんだけど」
それからセンは協会に引き取られた頃の話を始める。そこから説明をしなければならないらしい。
協会にセンが引き取られたのは4歳か5歳の頃で、その頃のセンはその年頃の子供と比べて何も出来ない子供だったという。
言葉はろくに話せないし通じない、食事はほぼ手づかみなど、世間一般的な教育が一切されていなかった子供だった。
「詳しいことは協会の職員に聞いて、セルジュとかトネリコくらいの年齢から上の人ならみんな知ってるから」
「分かりました」
小さい頃のことは自分よりも周りにいた大人の方が覚えているものだろうから、そんなものだろう。
センもこの辺りの話は協会職員から聞いたことの方が多いと言う。自身が覚えていることもあるが曖昧なものが多いとか。
「そんなことと、魔力がなさすぎることから師匠になった人にはまともに育ててもらえなくて協会に保護されたんだ」
早い話が虐待されていたということだ。
協会も相性など考えた上で誰の弟子にするかは決めているのだが、その時は上手くいかなったらしい。
思ったより壮絶な話にスコットは唖然とするが、センは特に何も思ってないらしく淡々と話す。
「それから次の師匠を探してるうちにズルズル月日が経って、協会で育てられたって感じかな」
割と簡単にまとめられたセンの話だが、スコットにとっては少々理解が追いつかず、情報整理に時間がかかっている。
「滅多にないことだからな」
「そう、ですよね」
魔力が少ないことで引き取った弟子にがっかりする師匠がいるというのはスコットも耳にしたことはあった。
だから、それを理由に拒否されることが現実にあると驚きを隠せない。
「結果として良かったと思うけどね。協会は魔力の少ない人が多いから」
そのおかげで魔法の技術はかなりついたとセンは笑う。
事実、センの魔力量では普通に魔法を教えるのすら困難を極めるのは確かで、協会で育ったのはセンにとってはいい環境だったと言える。
「だから魔法が上手なんですね、セン師匠」
納得するスコットにセンはそうかもと笑うと、イグニスのカップが空なのに気づきお茶を注ぐ。
「みんなが魔力が少ない僕を世間に負けないようにってしてくれたおかげかな」
「そうなんですね」
「センに才能があったってもでかいだろうけどな」
オリジナルの魔法は教えることは出来ても、それを扱えるようになることはかなり難しいものだ。
そうじゃなくても平均値を下回る魔力しか持たないセンが、大抵の魔法使いと渡り合えるだけでもそれは才能とも呼べる。
「トネリコは厳しかったよ。モンスターはびこる中に連れられて自力で出てこいとかね。あれは死にかけたなぁ」
「おい待て、それは……」
椅子から立ち上がったイグニスがセンに詰め寄る。
「似たようなことはイグニスにもしたね。早く強くなりたいって言ってたから、イグニスもやる気だったし」
「そんなもんにトアルまで巻き込むな!」
死にかけたと言うセンの言葉にイグニスが噛み付く。
戦いに向かないトアルまで突っ込むのは今更だがどうかしている。当時それが分かっていたら全力で止めていたのに。
「その方がイグニスも引き際をわきまえると思って。ルピナスも僕も見守りはしてたから、僕の時よりは安全だよ」
「そういう問題じゃねぇ」
師匠ズの話を聞き、自分もそうすれば強くなれるのではと同じ方法をやろうするスコットがいたのはご愛嬌。
イグニスもセンも全力をそれを阻止したとか。




