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師匠なしでの森の外

「スコット、遊び行くぞ‼︎」


 朝から元気よく家に訪ねてきたのはリオンだ。


「――ったぁ。なーにすんだよ!」

「まずは挨拶です、リオン」


 リオンの頭を後ろから掴んだセルリアは、リオンと一緒に頭を下げる。


「朝早くからすみません、先輩」

「いや、大丈夫だ」


 イグニスは大して気にする様子もなく平然としていて、ひとまず客人にお茶を出す。


 セルジュなど突然やってきて入り込んでいる相手が多いので慣れているのだ。


 特にルピナスは玄関ではないところから入ってきていたりするので、玄関からまともに来るのならいい方だとイグニスは思っている。

 まぁ、これに関してはセンのことをよく分かっているルピナスがやることなので仕方がない。


「これからちょっと外に行くんですが、リオンがスコット君も誘いたいと言ってまして」

「外にか?」


 森の外と言われれば、少なからず二つ返事でスコットに許可を出せるわけでなく、イグニスはセルリアの言葉に聞き返した。


「はい、すぐに帰りますよ。外の魔法用品店に行くだけですから」

「それなら、まあ大丈夫か。どうする、スコット?」


 行く場所を聞いて問題はないだろうとイグニスは判断をスコットに任せる。


「行ってもいいんですか?」

「いいぞ。セルリアなら目を離すこともないだろうし」


 躊躇いがちに言うスコットに対してイグニスはセルリアならば大丈夫だろうという。

 トラブルが起きても対処能力の高いセルリアなら大抵のことはどうにかなるだろうということもある。


「任せてください。すぐにいなくなるリオンよりよほど安全でしょうし」

「ちょっ、お師匠!」


 スコットの前で恥ずかしいことを言われたとリオンは焦るがセルリアは意に返さない。


「それではお預かりしますね」

「行ってきます、師匠」


 セルリアのドラゴンリーフェに乗って、スコットたちは出かけて行った。


 飛び立って数分、上空からの景色を見ることも忘れてリーフェの上でスコットは身を硬くしていた。


 イグニス(師匠)が許可を出したくらいなので何も起こらないだろうとは思う。

 思うのだけど、やはり森の外と言うのはまだ怖いもので、これから外に行くと自覚してしてしまえば奥底に絡みついた恐怖に動けなくなる。


 それに気がついたセルリアは軽く息をはいてからスコットに声をかけた。

 解決へはならないが少しは心軽くなるであろうと。


「スコット君。魔法の言葉を教えます」

「魔法の言葉?」

「はい、何かあればこう言ってください。スターリンクの一員だと」


 それのどこが魔法の言葉なんだと目をパチクリさせるスコットにリオンが自慢げに答える。


「すげーんだぜ。この言葉があれば町中で魔法使ってもバレねぇのな」

「リオン、それは自慢すべきことではないでしょう。リオンの不注意ですし」


 全くと呆れながらセルリアは言って、だからそんなに怯える必要もないと笑った。


「魔法も手品も仕掛けが分からなければ同じに見えるんでしょうね」

「今度どこまで手品で通用するか試してみたいよな〜」

「それは興味深いですが、やめてくださいね。1人だけの問題になりませんので」


 笑顔で釘をさされたリオンがすごすごと引っ込み、それからしばらくして目的地に到着した。


 町中を少し歩いて辿り着いた先は人里からわずかに離れた小綺麗な屋敷で、セルリアはチャイムを2回鳴らすと何かを取り出して扉に当てた。

 すると、光を放った扉が音を立ててキィと開く。


「魔法使い用の入り口です。さ、行きますよ」

「はい」


 驚くスコットにさっくりとした説明をしてから、セルリアはスコットとリオンを連れて中に入った。


 中に入ると愛想よくニコニコとしている女性が近づいて来る。


「本日は何を……あら、見慣れない方が」

「リオンの友人です」

「そうでしたか。ゆっくりご覧になってくださいね」


 セルリアが女性に欲しいものを伝えている間にリオンは店の中をぶらついていて、スコットはそれを追いかける。


 並んでいるのは大型の魔道具やその部品で、特殊な部品は技術を持った職人でなければ作れないとリオンが言って、近くにいた店員が補足をしてくれる。


 かなり高度な技術で作られるものはなかなか作れる人がいないため、魔法使いなどと言わずに作ってもらうらしい。


 魔法使いのためとあまりいい顔をしていなかった職人も話を聞けば腕がなるとやる気を見せて引き受けると言う。


「その道にのめり込んだ人ってそういう人が多いんですよね。限界を作りたくないとでもいいますか」

「あー、お師匠の家族見てると分かる気がすんな」


 一つの道を極めようとする人たちはそう言った人が多いと買い物を終えたセルリアが言えば、リオンがそれに納得する。

 彼らには完成という言葉はなく、どこまでも自身の能力の先へと向かおうとするから。


「さてと、少し買い物をしてから帰りましょうか」

「いつもんとこだろ。行くぞ、スコット‼︎」

「待ちなさい、リオン」


 リオンの襟を掴んで引き止めたセルリアは、呆れたように息を吐いた。


「全く、リオン1人が迷子になるならいいですが、スコット君まで巻き込まないで下さいね」


 町の中の散策はリオンの騒がしさにすっかり緊張も忘れて楽しんでいるスコットをセルリアは微笑ましく見ていた。


 魔法使いだと分かった瞬間からの、周囲の反応というのは幼い心に大きな傷となって残っている魔法使いが大半で、森の外に出たがらない魔法使いも多いのだ。

 例え、魔法を使わなければなんてこともないも分かっていても。


 それから、スコットが家に帰るとセンがいて、スコットは大きく驚くのだった。

お読みくださりありがとうございました!

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