外伝 賢者は自由人
今年もスコットたちをよろしくお願いします!
魔法協会の職員たちはみんな慌ただしく動いていた。
その動き一つ一つが緊張を持っているのはきっと、グリーン王国の先王が滞在しているからという理由だけはなかった。
なぜなら、昨日から賢者が魔法協会にやってきているからだ。
どこかの国の地位の高い、王族などならトネリコやセルジュなどが対応するので他の職員は対して気にする必要もなく通常業務をしていればいい。
彼らも自由にこの魔法使いたちの場所を動き回ることはないため、気合を入れてなければならない人がいるとすればコックくらいだろう。
しかし、賢者となれば別だ。
彼はありとあらゆる魔法を使え、その実力は数多の魔法使いの力を凌駕すると言われている。魔法使いとしては最高峰に位置する、伝説級の人なのだ。
そんな彼がそばにいて落ち着いて仕事を出来る人がいるだろうかというものだ。(セルジュやドロシーは割といつも通りである。)
彼は休憩中の職員たちを見つけては会話を交わしている。
誰もいない協会の廊下で賢者が一人、誰にと言うわけでもなくしゃべっていた。
「全員、元気そうで何より。さーてと、せっかくだし挨拶でもいってくるかな」
賢者は指をパチリと鳴らして己の姿を変えると、深くローブのフードをかぶり直した。
迷いない足取りで協会内を歩く賢者は、最上階にあるわずかに金があしらわれた扉の前まで行くと、ノックをして中に入った。
「これは賢者様……」
部屋の中にいたのはグリーンハイムとドロシー、それと魔法協会会長だった。
会長は黒髪に短髪の中年の男で、魔法使いというより格闘家と言われた方がしっくりとくる人物だった。
「グリーンハイム様、ご紹介します。こちらは賢者様です」
「ほう、あの賢者か」
魔法使いでなくても賢者という存在は広く知られているため、グリーンハイムが知っているのはおかしくはない。
特に彼は魔法使いに対してかなり友好的であり、その歴史にもかなり詳しい。
「その賢者です!容姿はトップシークレットってことでローブのままで失礼するよ」
「構いません。賢者のルールなのでしょうから」
「それは助かるや」
それから賢者はさも当然のようにソファに座り込むと、会長にお茶の催促をする。
どうやらここにまだ居座るつもりらしい。重要な話をしていたわけでもないので誰も賢者を追い出すことはしない。
「一度、挨拶をしたいと思っていました。グリーン王国は最大の支援国ですから」
「こちらとしても魔法使いには助けられている。正当な対価だと私は思っている」
「そう思ってもらえることは嬉しいことだね」
そう言って賢者は会長に淹れさせたお茶を飲んだ。
「今後とも良いお付き合いが出来ればと。お子さんたちも魔法使いと仲が良いみたいなので」
「そうさせるつもりです。私は架け橋となる国を目指していますので」
グリーンハイムの言葉に賢者に愉快そうにニッと口の端を上げた。
もしも、魔法使いが堂々歩けるような国が出来るとしたら、当たり前のような交流が出来るのであれば、それは魔法使いたちが待ち望んできた光景だ。
「後はよろしく頼むよ」
賢者は会長に声をかけるとパチリと指を鳴らして姿を消した。
「賢者は自由な方だな」
「そうですね。昔はもっと真面目だったと記憶していますが」
会長が賢者の唐突な行動に謝罪を口にする前にグリーンハイムが口を開き、会長は自分が幼い頃を思い出してそう返した。




