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グリーンハイムさん

 魔法協会前に立つイグニスは、ジッとスコットを見て一抹の不安を隠すように前を向いた。


 協会の中に入るとイグニスたちに気がついた受付職員が、イグニスを手招きで呼んだ。

 どうやら、グリーンハイムの方が少し立て込んでいるので、用意してある部屋で待っていて欲しいと言うことらしい。


 了承をしたイグニスはスコットを連れてその部屋に向かうと、髪や服をしっかりと整える。


 スコットからすればイグニスらしくない行動ではあったが、センから散々言われて過ごしてきたために染み付いているのだ。


 しばらく待っているとトネリコが老人を連れて部屋の中にやってくる。

 イグニスは立ち上がると老人に丁寧な口調で簡単な挨拶を交わす。

 どうやら、この男がグリーンハイムのようだ。


 イグニスがスコットを紹介しようとして振り返れば、スコットは怯えた顔をしてグリーンハイムを見上げていた。


 ある程度予想はしていたのでイグニスやトネリコは驚きはしないが、やはり初見ではこうなってしまうか小さく笑った。


 なにせグリーンハイムの顔は険しく、元国王しての威厳を持っていて、小さな子供なら顔を見ただけで泣き出してしまうほどだ。

 我が子にすらなかなか懐かれなかったという話があるくらいだ。


「スコット君、怖いのは顔だけだから安心していい。イグニスだって怯えてないから問題ない」


 グリーンハイムにこの状況をどうにかしろと目線で訴えられたトネリコがスコットに対してそう言って続ける。


「この方は自分のお菓子を取られたくらいなら笑って許すから」

「懐かしいことを。あれはセンの目を離したお前たちが原因だろう」


 懐かしさに目を細めたグリーンハイムが、トネリコに向かって悪態をつく。


 協会で育ったと言うセンと会うことはグリーンハイムもあったのだろう。

 しかし、今のセンから想像できない話だとスコットは思う。


「センともイグニスとも違い、素直そうな子供だな」

「そうですね。でも、純粋だといえば似ているかもしれません」


 トネリコはセンやイグニスの幼い頃を思い出してそう言った。

 センはあまりにも幼すぎて、イグニスはセンに勝ちたくて一生懸命でまっすぐな純粋さがあって、それはスコットの素直な純粋さとも重なる。


「そう、か」


 グリーンハイムが笑うが、その笑みにスコットはさらなる恐怖を覚えてイグニスの服の裾をぎゅっと掴んだ。


 よほど肝が座っていないとそうなるのは割と必然なので、誰も何も言うことはなかったがグリーンハイムはわずかに気落ちしていた。

 懐かれたいと思うものの、この悪人顔のような顔をでは初対面で懐かれるのはどうにも難しいらしい。


 怯えるスコットはひとまず放置し、イグニスたちは他愛もない話を始める。

 グリーンハイムが大量に送って来た荷物のこと、エルマンやユーリのことなど小難しい話は一切なかった。


 和やかなその様子にスコットも怯えや緊張もわずかに溶けて、スコットは自分に出されたお茶のカップを両手で持ってチビチビと飲んでいると、お菓子の入った皿がスコットに差し出される。


 手を辿れば、その先にはグリーンハイムがいてスコットは戸惑いの色を乗せてグリーンハイムを眺めた。


「これも食べるといい」

「えっと、その……ありがとうございます」


 一度イグニスの顔を見てからスコットは戸惑いながらグリーンハイムにお礼を伝える。


 グリーンハイムからすれば、懐かれたい、心を開いてもらいたいと言う打算もある。

 それに、今出されている菓子はグリーンハイムからの要望でスコットの好みのものが出されていたりする。


 イグニスは甘やかさないでくれという視線をグリーンハイムに向けつつ、会話を続ける。


 時折スコットに質問が向けられて、スコットが緊張をしながら返していて、最後までこんな様子であったためにグリーンハイムはすこしショックを受けていたようだった。


 ☆☆☆


「どうです?可愛い子だとおもいませんか」


 協会を出るイグニスとスコットの後ろ姿を協会の中から見下ろすセルジュがそう問いかけた。


「そうだな。しかし、苦労も多かろうな」

「おや、稀代の天才と呼ばれた方にも分かりますか」


 茶化すようにセルジュが言えば、グリーンハイムは可笑しそうに声を出して笑った。


「見てきているからな」

「なるほど」


 納得したようにセルジュは笑みを浮かべ、席を外していたトネリコが戻ってきたのでセルジュはグリーンハイムに一礼してからその場を離れた。


 トネリコは時間を確認した後、明日の予定をグリーンハイムに伝えてから空いた時間をどうするかをグリーンハイムに提案をしていた。

今年もありがとうございました。

来年もよろしくお願いします。



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