セルジュの訪問
カタリナ襲来から数日後の昼下がり。
庭で風魔法の練習をするスコットたち。
「おー、やってるね」
突然声がかかる。
声のする方を見れば見知った顔で、セルジュが立っていた。
「セルジュさん」
「久しぶり。やっと目処がついてね」
「目処?」
理解できていない二人をよそに、セルジュは話を続ける。
「そう。交流会のね。思いのほか時間がかかって――」
「ぼくもいけるんですか?」
キラキラとした目線をセルジュに送るスコット。
自分は行くことはできないかもしれないと思っていただけにかなり嬉しい出来事だ。
「余計なのと会わないようしたからって、なにこの喜びよう」
「この前カタリナがきて……」
「なるほど」
事情を察したセルジュは、納得した顔をするとスコットに招待状を渡す。
「遅くなってごめんね。お詫びにお菓子も持ってきたから食べよう」
手にした包みをスコットに見せると、セルジュはスコットを連れて家に入っていった。
イグニスはため息をついて家に入る前にぽつりと呟く。
「協会に連絡しとくか」
半分は仕事から逃げるために来たんだろう。昔からそうだったから。
家に入れば、カスタードタルトとお茶が用意されていて、すぐに食べられる状態になっていた。
逃げられる心配はなさそうだ。
「師匠、美味しそうですね」
「そうだな。……これ、は」
「想像通りだよ」
顔をしかめるイグニスに、セルジュはクスクスと笑って疑問符を浮かべるスコットに説明をする。
イグニスは話したがらないのはわかっている。
「これはイグニスの師匠のセンの手作りでさ」
「師匠の師匠……」
「そうだよ。まだ、会ったことないのか。センは待ってると思うけどなー」
イグニスのほうにセルジュはじーっと視線を向け、本当に連絡一つしていないんだなとセルジュは実感する。
仲が悪い師弟というわけでもないのだが、言うならイグニスの意地の部分が大きい。
「いいんだよ。もっと力をつけてからで」
「そっか」
「セルジュさん。師匠の師匠ってどんな人なんですか。化け物としか教えてくれなくて」
カタリナが来た時に聞いた化け物以外になにもスコットは知らない。
あれ以降聞こうとしても、イグニスは話してくれないので知りたいのだ。
「化け物ね。イグニスが魔法大会で優勝してるのは知ってる?」
「はい。大会にでれること自体がすごいことだって」
「そのイグニスでも勝てないのがセンだよ」
「すごい強いんですね」
魔法大会自体、同世代の中でかなりの実力がなければ声がかからないので出場出来ること自体一つのステータスになっている。
「ただ、魔力量が多いわけじゃないから異常な強さだね」
セルジュはカップのお茶を飲み干すと、ため息をつく。
「イグニス、連絡したでしょ」
「はい」
玄関の扉が開く音がして、一人の男が入ってくる。魔法協会の人間だ。
「ありがとな、イグニス。本当にお前はすぐに逃げ出しやがって」
「気分転換だって」
「そうか。じゃあ、散歩の気分転換に仕事をしろ」
セルジュは男に連れられて魔法協会に帰る間際、なにかを思い出したのか声を上げる。
「そうそう、交流会の担当は僕とこいつだから」
「任せとけ」
スコットは行く気しかないので問題はないが、当日行かなければ家まで迎えが来そうだと思うイグニスだった。




