成長しない技術は
師匠からお使いだとカタリナがフィアを連れてやってきた。
「はい、これ」
「助かるって伝えといてくれ」
今日は作物そのものではなく、料理済みのものだった。
時折、カタリナの師匠はこうして料理をカタリナ経由で渡してくれることがある。
いくら家が近いと言ってもそれなりに距離はあるため、イグニスも少し休んでいけと家にカタリナたちを招き入れる。
「お師匠様が心配してたわよ。まともな食事は出来てるのかって」
「食えるもんしか作ってないとだけは言える」
イグニスの返答に呆れたように笑ったカタリナは、自分も似たようなものなのでイグニスをバカにすることも出来ない。
「あれでもお師匠様はあんたのこと心配してるのよ。口うるさいババアだと思われてるから直接会うつもりはないみたいだけど」
弟子時代にそれなりに交流があったこともあり、カタリナの師匠もイグニスのことはよくわかっているのだ。
なので、センから離れたイグニスがまともな食事を出来ているかは心配しているようらしい。愛弟子同様、料理下手だと知っているので余計に。
まあ、弟子がいれば多少なりとは気を使うだろうとは考えているようではあるが。
「あー、バレてんのか」
「そりゃあね。結構顔に出てるもの」
スコットはカタリナの師匠がどんな人物なのか分からず首を傾げる。
知っていることといえば、料理が上手なことくらいだ。
「とてもしっかりしてる人なの。お姉ちゃんは厳しい人って言うんだけど……」
どうやらフィアはそこまで厳しい人だとは思っていないらしいが、カタリナとイグニスにはそうではないらしい。表情に出ている。
「師匠たちにとっては厳しい人でフィアさんにはそうじゃない……。ということは、あんまり厳しい人じゃなさそうです」
「真面目な人なのは確かよ」
イグニスたち3人の様子に見てスコットが出した結論は、おそらくそこまで厳しくないである。
イグニスは意外と手を抜くことも多いし、カタリナはどちらかというとフィアの方がしっかりしているイメージがある。
なので、常識的な範囲で厳しいだけなのだろうとスコットは思った。
もっとも、周りが緩すぎるだけなのかも知れないが。
「ま、そうは言っても弟子には厳しすぎるか甘やかしすぎるかのどっちになるもんだけどな」
「一理あるわね」
お互いに弟子を持つ身になって思うところもあるのだろう。今だから分かることもあるらしい。
「協会なんかは甘やかしすぎだとは思うが」
「あれだけ優秀ならそうなるものなんじゃないかしら。本来弟子は持てないわけだし」
「いや、手のかかるやつほど可愛いってやつだろ」
ぼそっとイグニスが言った言葉は誰にも聞こえなかった。
それからもう少しだけ休憩をしてカタリナは帰り際にスコットに言った。
「今度、うちに遊びに来ればいいわ。いつもお邪魔してばかりだし」
「お出かけ!師匠、行かなきゃならない場所がどんどん増えていきますね」
「ああ、そうだな」
はしゃぐスコットを見てクスリと笑ったカタリナは、大抵は家にいるからいつでも遊びに来てと言い残し、フィアとともに帰っていった。
カタリナの師匠が作った料理を幸せそうに食べるスコットの姿を見て、イグニスは料理の腕を磨かなければと思うのだった。
ありがとうございますございました。
大抵の師匠はとりあえず体を壊さないものなら作れるようです。




