ルピナスが帰った後の話
「師匠、ルピナスさんが言ってたことって……」
ルピナスが帰ったあとで、スコットがイグニスに訊ねる。
センが魔法協会で育ったというのが事実であるとスコットは信じられないのだ。
もちろん、ルピナスが嘘をついているようには思えないし、イグニスも否定をしないから事実なのだろうけど。
弟子を取る魔法使いは、魔法協会の職員は魔法警備団など他の仕事をすることは認められていなかったはずで……。
「本当のことだ。協会も特別措置として、そうせざるを得なかったってのがあるみたいだけどな」
そう言いながらイグニスは、ルピナスが買い込んだ食材の余りを確認して夕食のメニューに悩んでいた。
あまりにも食材が多く、献立を考えるにも一苦労だ。
「協会がセンに甘いのも、センが協会の手伝いさせられんのもその辺りが理由だ」
半分は協会職員のようなものだとイグニス。
初めてセンの家に行ったときもセンは協会の仕事を手伝いに行っていた。
そのときに昔協会にいたと言っていたが、どうやら勤めていたということではなく、そこで育ったという意味のようだ。
「師匠は知ってたんですね」
「まあ、さすがにな」
師匠と弟子というは切り離せるものでもなく、協会育ちというセンは異端だと避ける魔法使いも多く、それはイグニスがセンの弟子と分かっても同様だった。
その時にセンの口からそれは聞かされていて、それに至るまでの経緯も後から聞いた。
スコットに伝えてもセンは怒りもしないだろうが、少々それを教えるにはイグニスも躊躇いがある。
あまりにも簡単に伝えられるものでもないのだ。
「そのせいでペテン師とか言われるようになったらしい。協会の贔屓だとかなんとか」
「そうなんですね」
そう言いながらイグニスが思うのは、協会育ちじゃなければあそこまでの化け物も生まれなかったのではないかということだ。
少ない魔力で戦い抜く魔法協会の職員たちの技術を教え込まれ、それをマスター出来るだけの技量があったことも大きいが、それにしてもである。
「今度、セン師匠に聞いてみます。いつ会えるかなぁ」
スコットが言ってイグニスは軽く息を吐いた。
センはケロっとした感じで話すのだろうが、聞くこっちの身からすると気分は重くなってしまうような話だ。
センは全く気にしていないので仕方ないのだが。
スコットはイグニスが淹れてくれたお茶で一息をつくと、それにしてもと呟いた。
「――ルピナスさんって騒がしい人でしたね」
「そうだな。でも、あれでよく気がつく人だからな」
同じように騒がしいリオンと比べ、さらに騒がしい。
ルピナスに関しては嵐がきたようだと言っても差し支えはないかもしれない。
アレスに似て割と豪快なせいでフォローするより大笑いしてくることの方が多かったりはするが、アレスよりは豪胆ではないようだ。
それが元々の性格なのか、トアルの師匠としてやってくうち手に入れたものなのかは分からないが細かいところに意外と気がついたりするのだ。
「次はグラジオさんたちのお家に遊びに行きたいですね」
「そう、だな」
スコットは楽しそうに言うがイグニスは歯切れが悪い。
もちろん、遊びに行きたい気持ちはあるのだが、スコットも一緒になるとなかなかに大変な気がする。
トアルも安全の確保に動いてくれるはずだが、何せルピナスとアレスのケンカ中は容赦なく魔法が飛んで来る。
客人がいるからと気を使うようなことはないのは目に見えているため、危険がともなう。
そんな場所に行くとなると事前の備えは重要で、イグニスはため息をつくのだった。
ありがとうございました。




