有名な話だぞ
なにもしないのも悪いと、ルピナスは身体強化を使って買い物に出かけると食材を買い込んで来た。
豪快な性格みえるルピナスではあるがこういった気遣いはできるらしい。
「昼飯は俺が作るかんな」
ルピナスがあまり料理が出来る感じに映らないのだが、スコットを見たルピナスは親指を立てて安心しろと笑った。
「これでも立派に弟子を育てあげてんだ。美味いものしかださねぇよ」
ここまで自信ありげに言われてしまうと、つい信じたくなってしまう。
スコットはイグニスのガサツな料理よりは確実に美味しいものが食べられるのではないかと信じてしまっている。
助かるとルピナスにいうイグニスは歯切れが悪く、スコットは遠慮をしているのかとも思ったのだがどうやら違うようで、それはルピナスの料理が完成してからわかった。
というか、スコットは以前トアルが言っていたことを忘れていた。
ルピナスの料理は焼き加減など食材の火の通りは抜群なのだが、その全ての味付けが塩のみで、ほぼ切って焼いただけというシンプルなものが多かった。
原始的ともとれる料理ではあるが、良く言えば素材の味が楽しめるといったふうだ。
ちなみにルピナスは魔道具は一切使わず、自分の魔法のみで作っていた。
美味しいはおいしいのだが、少々味気ない。
味付けの点ではイグニスに軍配が上がりスコットからするとどっちもどっちな気がしてしまう。
でもまぁ、たまに食べるぶんにはこういうシンプルな味付けもいいのかもしれない。
人参にフォークを刺したルピナスは、それを眺めて口を開いた。
「そういや、センにまた負けたんだって?」
どこか楽しげにそう言ってルピナスはフォークに人参をもう一つ刺すと空になった食器を魔法で流しに飛ばした。
ここに来るより前にセンのところに遊びに行ったと言うのでその時に聞いたのだろう。
負けたと認めたくないイグニスは曖昧な言葉で濁した。
「まぁ、そうですね」
知られたくないことだと思いつつ、トアルとのわだかまりが解けた今、こうなるのも必然だ。
イグニスがため息をついて答えると、ルピナスはその時のことをスコットに尋ねて、フォークをくわえる。
「で、どんな感じだったんだ?」
「え、えっと……」
急に話を振られたスコットは少しだけ戸惑うが、すぐにその時のことを素直に話し始める。
「すごいんですよ、セン師匠!師匠がセン師匠に魔法を飛ばしてもセン師匠は魔法を全部消しちゃうんです。しかも、お仕事しながら」
「なるほど」
はしゃぐように喋るスコットは言葉では伝えきれない出来事を身振り手振りでルピナスに伝える。
「師匠はいっぱい強い魔法使ったり、セン師匠がよそ見してる時を狙ったりしてたんですけど、師匠は勝てなかったんです」
「そーか。その辺は全く変わらねぇのな」
想像がついて楽しそうに笑うルピナスは、イグニスにけっして慰めの言葉などは口にしない。
むしろ、イグニスがセンに勝てる日が来るわけもないと、その様子を見て楽しんでいるだけだ。
「それでセン師匠が勝って、森の外に行ったんです。人がいっぱいいて怖かったけどセン師匠は大丈夫だって言ってくれて――」
「ほお、楽しかったか」
「はい‼︎」
スコットは大きく頷いて、横からイグニスが口を挟む。
「講習会は後からやったし、協会もセンには甘すぎて」
「そりゃそうだろ。可愛い弟子にゃ甘くなるってな」
ルピナスの言葉にスコットは首をかしげる。
魔法協会に勤めているひと弟子を取ることは出来ないのだ。
「可愛い弟子?」
「ん?スコットは知らないのか」
今度はスコットの言葉にルピナスが首を傾げて、有名な話だから自分が喋っても問題ないと言って弟子といった理由をスコットに教える。
「あいつ、協会で育ったからな。これ以外はセン本人から聞いてくれ、さすがに俺が話すわけにゃいかねぇ」
詳しいことは言えないと口を閉ざすルピナスだが、スコットを理解に時間を要して何も言えなかった。
「ま、そのせいで悪く言われるんだけどな」
「あれは規格外としかいいようがない」
愉快そうに笑うルピナスはそろそろ家に帰ると、思考中のスコットを放置して外に出るとネージュを呼ぶが現れず、ため息をついたルピナスは魔法協会に向かうのだった。
ルピナスは自由ですね。
ありがとうございました。
短編を投稿したので、よろしければそちらも呼んで見てくださいね。
『根無し草のボクは今日も幼女に振り回される』
ほのぼのコメディーです。




