上手くいかないコントロール
庭で魔法の練習をするスコットは大きくため息をついた。
最近、イグニスが見つけてきた魔道具で魔力のコントロールが上手くなってきたかといえば成果は僅かで、ほとんど威力を上げられていない。
込める魔力を多くすると、それに振り回されてしまい使いこなせず、暴発しかねないので使える魔法の威力というのは相変わらず変わっていないのだ。
なかなか上手くいかないことにうんざりしたスコットはその場に倒れこむと、空を仰いだ。
どんよりとしたスコットの心と裏腹に、空は雲一つない晴天でそれがまた悔しさを感じさせる。
「コントロールなんて簡単に出来るもんじゃないぞ」
イグニスは上手く出来るとぶすくれるスコットを暖かな笑みを浮かべ、冷えた水の入ったコップをスコットに手渡した。
スコットはそれを両手で持ってコクコクと飲み始め、そこにトネリコがやってくる。
「庭にいたんだ」
「トネリコさんだ」
スコットが声をあげ、イグニスはいつも仕事を逃げ出してやってるセルジュではなく、休む暇なく働かされているトネリコがここにやってきたことに驚きを隠せないようで言葉を失っている。
トネリコは2人に手を軽く挙げて、ここにいる理由を淡々と話す。
「少しだけ時間に余裕があったから様子だけ見にきた」
その証拠にトネリコは時計を手から離さない。
「そうだったんですか」
「そう。あの2人がさぼらなければ休めるのに」
トネリコの時計を握る手に力がこもる。
イグニスは乾いた笑いを浮かべることしか出来ないがイグニスが子供の頃からトネリコはこんな感じだったので積年の恨みは相当なものだろう。
「今は何を教えてるの?」
「魔力のコントロールです。そろそろ中級魔法も視野に入れておきたいので」
「教える方も苦戦しそうなものを」
「それはまぁ、魔道具を使ってなんとか……」
この前見つけた魔道具でとイグニスが説明すると、トネリコは懐かしいものをと呟いた。
「あの人の作ったやつここにも置いてたっけか。使えるものは使えばいい」
「トネリコさん。これ出来ますか」
さっきから大人しいと思えばスコットはちょうど話題にしていた魔道具を家に取りに行っていたらしい。
「出来るよ」
魔道具に触れることなくスコットが持っている魔道具までトネリコは魔力を飛ばす。
炎は一切の揺れを見せずピンと立っている。
「わ、すごい。師匠がやってもこんなにならなかったのに」
「この人はまた特別だ、スコット」
微動だにしない炎は、トネリコが話をしていても続いていて全く揺れる気配がない。
「総魔力が多いとコントロールは必須だからね。お師匠にも散々やらされたし」
遠い目をするトネリコの姿はその苦労を物語っている。
「お師匠に?」
「詳しくは割愛するけど、無茶が多かったから」
そのかいあってか、トネリコの魔法は研ぎ澄まされていて、常人離れしたコントロールが可能で魔力消費の大きい強力な範囲魔法も何度も打つことも出来てしまう。
パタンと時計の蓋を閉じたトネリコは軽く息を吐いた。
「ギリギリだし、協会に戻る。今度は時間作って遊びに来るよ。あの2人を1日くらい缶詰にしたっていいはず」
「まぁ、1回くらいならいいと思いますけど……」
風魔法を使って上空に浮かんだトネリコは、突如現れた巨大な鳥に捕まると魔法協会の方向に飛んで行った。
「師匠、あの鳥も魔法ですか」
「魔法だな」
鳥の姿が見えなくなるまで空を見上げていたスコットは、今度セルジュが来たときにトネリコが休めるようにサボらないように言ってみようと思うのだった。
ありがとうございました。




