倉庫から出てきたもの
丸一日かけて二階の物置部屋からイグニスが使えそうだと見つけ出せた魔道具とたったの二つだけだった。
テキパキと確認していけば一日でも終わりそうに見える物置に集められた道具は見た目と同量ではないのだ。
箱自体が魔道具なので家同様に見た目よりもずっと容量は多く、おそらく魔法協会自体の倉庫としても使われていたのだろう。
主に個人的に作られたと思われる魔道具が多数を占めていて、一つひとつ確認していかないと何が起こるか分からない。
見た目が同じでも機能が同じとは限らないのだ。
そうして苦労してスコットの魔法練習に使えそうな魔道具を見つけ出したイグニスは、リビングにその二つを運ぶと魔道具の調子を確かめる。
一つはロウソクのように見える魔道具で、イグニスが魔力を流すと炎のようなものが先端から飛び出しユラユラと揺れる。
「問題はなさそうだな」
イグニスはそう言いながら、炎を見つめて苦笑いをしていた。
やはり魔力のコントロールとなると苦手なのがよくわかる。
もう一つの魔道具は丸い水晶といった風で、イグニスはそれに触れると一気に魔力を流し込んだ。
水晶の中心に赤いモヤがかかり、イグニスが魔力を流すたびにその色が変わった。
「こっちも大丈夫か」
イグニスは動作に問題がないことを確かめると、スコットが触らないように棚の中にしまうと眠りについた。
翌朝、座学を終えて昼からの魔法練習に張り切るスコットはいつものように庭に出ようとしてイグニスに止められる。
「スコット、今日は家の中でやる」
「ほえ?外じゃなくて家の中ですか」
イグニスは昨日探し出した魔道具を棚から取り出して机の上に置いた。
「魔道具ですか」
「ああ」
魔道具をつかうことに嬉しさはあり、すぐにでも触りたいとも思うのだが、スコットはリオンとの合同授業の際に話を聞かず魔道具を触ったリオンが頭をよぎり魔道具に手を伸ばさなかった。
授業で使うための魔道具なので危ないものではないのだろうとスコットは思うが、イグニスからは迂闊に魔道具を触るなと昨日、己の失敗談を交えて説明されたばかりなのだ。
「魔力のコントロール用の魔道具だ」
そう言ってイグニスはロウソクのようなものに魔力を流し込む。
すると先端に炎が出てきて小刻みに揺れ始める。
「これは少量の魔力を流すとこうやって火が出てくるんだが、流す魔力が一定じゃないと火が揺れる」
イグニスがわざと流す魔力の量を大きく変えると炎は大きく揺れて暴れまわり、イグニスが少量で一定の魔力を流し始めるとまた炎は小刻みに揺れ始めた。
「これが上手く出来るようになれば中級魔法の入り口に入れる」
「頑張ります!ところで師匠、これが揺れてるのは――」
「もう一つ魔道具について説明する」
スコットが疑問に口したが、イグニスは聞こえていないかのようにスルーをして、二つ目の水晶のようなものの説明に移った。
どうやら触れるべきではないものらしい。
「こっちはまぁすぐに使うものでもないが、暴発防止に使えるかと思ってな」
水晶に触れたイグニスが上級魔法を唱え、水晶が赤く染まった。
魔法を吸い取ったように見える。
「これに触れて魔法を使えば吸い込まれるからな」
「本来は何に使うものなんですか」
「分かればいいんだけどな」
イグニスにも本来の用途は分からないらしい。
「これは多分偶然出来たものなんだろう。こういうのを大量生産する人に心当たりがある」
「協会の人なんですか?」
違うとイグニスは首を振って、大方邪魔になったのでありがた迷惑の寄付という形で魔法協会に置かれているだろうと言った。
訳のわからないものを作るが多いが、同じだけ便利なものを作って来た人らしい。
「今日からしばらくはこれを使ってやってくぞ」
「はい」
やり方をイグニスから説明されたスコットは、ロウソクのような魔道具に魔力を流す。
炎は大きく強風に煽られているかのように揺れていて、今にも消えてしまいそうなほどだ。
「少しずつ、均等に……」
流す魔力量をイグニスのお手本の炎と同じくらいになるように減らしていくが、言葉を発するたびにコントロールがぶれてしまっている。
何度かの休憩を挟みながら続けて、ようやく炎の大きさは小さく出来たスコットだが、次の少量の魔力を一定に流し続けるというのにつまずいていた。
「難しすぎませんか、師匠」
なかなか上手く出来ないことに嫌気がさして机に突っ伏したスコットはなんで出来ないんだと呻いていた。
「俺も苦手分野だからな。コントロールについては説明がしにくい」
「そういえば、セン師匠のところに行ったのもそんな理由でしたね」
「忘れた」
記憶にないふりをしてイグニスはそう呟いた。
イグニスはよく使っていた上級魔法なら完璧なコントロールが可能です。
他の上級魔法については・・・。




