外伝 家に帰って
「ただいま帰り――わぁっ」
久しぶりの我が家に帰り、玄関の扉を開けた瞬間に火炎弾が飛んでくる。
トアルはすぐさま火炎弾の軌道を変えて自分とグラジオの安全を確保をして中に入った。
「はぁ。タイミングが悪かったなぁ」
「そうですね。ちょうど始まったばかりみたいですし」
頷いて肯定したトアルは飛んでくる魔法を受け流して、グラジオに荷物を片付けを頼んだ。
センのように作業をやりながらというのはトアルには出来ないため、そうなってしまう。
二人のほとぼりが冷めるまで待つしかないとしても、荷物くらいは片付けておきたい。
魔法の受け流しで師匠たちに反撃は可能だが、戦闘において力を発揮する二人にはほぼ効果はない。
トアルはグラジオを守りながら、家が魔法の被害に遭わないようにあけ放ちの窓に魔法を飛ばしていた。
しばらくしてやっとトアルとグラジオの存在に気づいたルピナスとアレスはケンカを中断する。
「なんじゃ、帰ってきたなら声をかけれればいいものを」
「予定より早くないか」
イグニスと上手くいったのかは分かりきっていることなので聞かない。それにトアルの顔を見れば分かることだ。
だからルピナスもアレスもトアルとグラジオに笑いかえす。
早く土産話は聞きたいが、根掘り葉掘り聞くのならじっくりとだ。
「協会のドラゴンに乗せてもらったから予定より早く帰ってこれたんです」
「そういうことか。納得」
魔法協会は目的地が魔法協会職員の行く方角と同じなら同乗させてくれることもあり、今回はタイミングよくドラゴンでの移動だったのでかなりの時間短縮になった。
旅の疲れもあるだろうと夕飯までの二時間ほど休ませてもらったトアルとグラジオは、アレスの作った料理が並ぶ卓を囲む。
一番に食事を口に突っ込んだルピナスは、遅れて席に着いたトアルたちに口に食べ物が入ったまま口を開いた。
「んで、どうだったんだ。あいつらは?」
「ルピナス!喋るか食べるかどちらかにせい」
アレスに注意を受けたルピナスは水を一気に飲んで流し込むと、トアルに視線を向けた。
「うん、元気だった。思ったよりもずっと簡単で、僕らが怖がってただけなんだって……」
落ち着いたふうなトアルは、それ以上の言葉は言わずにスープをスプーンにすくうと口に運んだ。
「お前らの引っ掛かりがなくなったならいいけど、変なとこでそっくりだよなぁ。トアルもイグニスも」
「そう、かも」
ルピナスはカゴに無造作に山積みにされたパンを手に取ると千切らずに丸かじりをして飲み込んだ。
「で、ジオはどうだったんだ。トアルは分かりきってるがお前は未知数だからな」
「そうですね、仲良く出来そうです。どこかトアル先生に似ている気はします」
楽しかったと笑うグラジオに安心をしてアレスは豪快に笑う。
「そうか。そりゃあイグニスとも上手くやっていけるわけじゃ」
「ならいいけどな。センみたいなのじゃなくて良かったってな」
乾いた笑い浮かべるトアルは、イグニスが子供に丸め込まれる想像をして、首を振ってそれを振り払った。
なんだかんだイグニスは咄嗟の判断力には優れているのできっとそうはならないと。
ルピナスはコップに水を入れて飲み干すと、トアルとグラジオを見てコップを机に勢いよく置いた。
「それじゃ俺もそろそろ解禁するか。明日からセンとこ行くわ」
それだけ言ってルピナスはさっさと自分の部屋に行ってしまった。
食器くらい下げんかというアレスの声はもう届いていなかったが、今日のアレスはそれ以上何も言わなかった。
ありがとうございました。




