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トアルとグラジオ

 驚きから解放されたイグニスはトアルたちを家の中に招き入れる


「本当はもっと早く来れたら良かったんだけど……」

「それはお互いにだろ」

「うん。ただ、交流のことを考えるとイグニスは特に大変だろうなって思うし」


 イグニスは世間的にいい評価があまりなく、目つきが悪いこともありやや悪人顔に見えなくもない。

 そこに師匠であるセンの悪い噂があるために、近づきたがる魔法使いは少ない。


「僕らはその苦労もよく知ってるから」

「……まぁな」


 名のある師を持つと、本人の意思に関わらず好奇の目に晒されるもので、イグニスにしてもトアルにしてもその苦労はしてきている。


「今のところは何も起こってないけど、協会の力が大きいのは確かだな」

「そうかも。僕らの時は師匠が暴れて大変だったもんね」


 トアルが息を吐く。

 自分でぶん殴るイグニスや穏便に済ませるセンと違って性格的にトアルは反撃をしない。


 しかし、彼の師であるルピナスは度を越してトアルがバカにされていると判断したとき、相手に対して容赦がない。


 これに関しては、相手もやりすぎているという周囲の声もあって毎回、魔法協会からは注意だけで済んでいた。


 イグニスとトアルが落ち着いて話をしている横では、スコットとグラジオがお互いの師匠達について会話をしている。


「へぇ、グラジオさんは4人で暮らしてるんですね」

「うん。賑やかすぎて困ることもあるけど」


 ルピナスとアレスが魔法を打ち合う姿を浮かべて苦笑いをしながらグラジオが言う。


「僕の先生のトアル先生、その先生がルピナス先生で、ルピナス先生の先生がアレス先生なんだ」

「アレス……どこかで聞いた気がするけど、師匠?」


 記憶を手繰るも思い出せないスコットがイグニスに助けを求める。


 イグニスは少し考えてから答えに行き着く。


「警備団の襲撃訓練のときのじーさんだろ」

「あの時のおじいさん!」


 どうやら思い出したらしいスコットが声を上げる。

 

「訓練に呼ばれたからスコットを見学で連れて行ってたんだよ」

「アレス先生、中央地区の練習を見学してきたって言ってましたね」

「そのときに会ったんだ」


 トアルたちにイグニスが補足を入れると、2人はすぐに納得をする。


 帰ってきてからしばらく機嫌が良かったのは、イグニスの元気そうな姿とその弟子のスコットをじかに見れたからと疑問も氷解したようだ。


「師匠だけ会ってないってわかったら騒ぎそうだなぁ」

「ルピナス先生の場合はちょっと出かけてくると言ってここまできそうですけどね」


 想像ができるだけにスコットを除く3人はわずかにげんなりした顔をしてなにも言わない。


 トアルとイグニスのわだかまりが溶けたなら、遠慮する必要もないとスコットの顔を見に行こうとするだろう。


 まぁ、アレスと一緒じゃなければそうそうに被害が起こることもないだろうが、単品でもある程度騒がしい。


「う〜ん、その時はよろしくね。たぶん、イグニスたちの顔をみたらすぐ帰ってくると思うし」

「ま、そうなるよな」


 1人だけ会話についていけていないスコットは首をかしげる。


「師匠同士も友達でね、イグニスのこともよく知ってるからスコット君にも会いたがってるんだ」

「もう俺が会いに行ったとしても問題ないよな、とか言ってな」

「止められる気もしないから来ると思う」


 自信なさげにトアルが言い、イグニスも納得しているようで分かったと頷く。


 それから、トアルとイグニスは空白の時間を埋めるように話をして、この日はイグニスも何の準備もないため、トアルとグラジオは魔法協会に泊まることになった。

ありがとうございました。


だいぶ登場人物が増えてきました。

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