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打ち上げ

 ある日の昼下がり、魔法警備団の若い団員がやって来た。


 どうやらこの間の対襲撃者の訓練のあと、元魔法警備団員であるアレスによる地獄の訓練が終わり、打ち上げをするのでぜひにとのことらしい。


 もちろんスコットも一緒に。


「あの日いなかった上司たちに連れてこいって言われてるですよー」


 顔の前で両手を合わせてお願いしますよと警備団員はイグニスたちに来てくれるように頼み込む。


「そういや、新人ばっかりだったな」

「そうなんですよ。うまい具合に仕組まれてたみたいで」


 出張やら、見回りやらであの時席を外すようにされていたようだ。


 特に断る理由もなく、予定は空いていたのでイグニスは了承する。


「予定はないし、いいけど」

「ありがとうございます。それで、移動なんですけど……」


 警備団員は気まずそうに目をそらす。


「なんだ?」

「移動の車は用意されていなくて、ですね。ハンデありのイグニスさんに勝てないようなら一週間特別メニューをやってもらうと言われてまして……」


 つまり、イグニスはスコットを連れて会場まで行く必要があるらしい。


 おそらく警備団員は若手のなかで足の早い人間なのだろうが、それにしても彼の上司たちは訓練と言いつつ面白半分でやっている気がする。


 警備団員が勝てば自信をつけさせられるし、負けてもやる気を出させる理由にしてしまえばいいのだ。


 ただ、イグニスの懸念が一つ。


 もしイグニスが負けた場合、自分も一週間の特別メニューをやらされるであろうと言うことだ。


 勝てばいいだけの話と割り切って、イグニスは息を吐く。


 それにしても、どう転んでも警備団は特別メニューをやらされることになるのだろうと思うと、なんとも言えない。


 スコットを抱えての移動は少々骨が折れるが、だからと言って魔法だけに頼る生活もしていないのだ。

 負けるわけにもいかない。


 スコットを抱えたイグニスと、警備団員が横一列に並んで、上空に投げられたコインが地面に落ちた瞬間に一斉に走り出す。


 走り出しは警備団員がリードしていたが、会場まで半分ほどになるとイグニスは揺れるぞとスコットに声をかけて、スピードアップをして余裕を持って勝利をする。


「ほお、やはりお前さんが勝つか」


 イグニスが会場に入ると、ヒゲを生やした爺さんが悔しそうにそう言った。


「全く面倒なことをさせやがって」

「ほほっ、お前さんの腕が落ちとらんか試したんじゃ」


 イグニスの迷惑そうな顔を見て爺さんは愉快そうにしている。


「団長たちがお待ちかねじゃ。さっさと行ってやれ」


 満足そうな顔をした爺さんはヒラヒラと手を振りどこかに行ってしまう。


 ため息をついて奥の方に進んでいけば、警備団員からちょこちょこと声をかけられる。


 スコットにも声をかけてくるので手持ち無沙汰になることはなかったが、人の多さやあまりにも声をかけられるので戸惑いも多い。


 だからレオルドを見つけた時ホッとした。


 同じ警備団でもやや寡黙よりの落ち着いているレオルドのそばは安心する。


 人への対応に疲れ切ったスコットはレオルドに預けられ、イグニスは中年くらいの警備団員に引っ張られてどこかに連れていかれる。


「……師匠」

「いつもことだから安心していい」

「そうそう、しばらく戻ってこないだろうからゆっくりしてればいいよ」


 レオルドの言葉に誰かが賛同をして、スコットが視線を移せばセルジュが立っている。


「セルジュさん……」

「出張中のトネリコの代わりにね、来てるんだ」


 セルジュがどうしてここにいるのか不思議そうにしているスコットに、セルジュが答える。


「そうなんですね」

「そうなんだよ」


 壁に背を預けたセルジュは手を持ったグラスをテーブルに置く。


 比較的静かな場所でレオルドとセルジュの2人と会話していたスコットだったが、他の団員たちがスコットに食べるものや(もちろんノンアルコール)ジュースを持って構いにくる。


 警備団からすれば、子供と関わる機会も少ないので珍しいを構いたくなるのだろう。


 スコットに近づく気さくな団員たちは、レオルドとセルジュの手によって適当にあしらわれていたので、スコットが囲まれることはなかった。


 外も暗くなってきた頃、クタクタになったイグニスがスコットの元に戻ってきて、家を帰ることになった。


「師匠、何があったんですか?」


 クタクタになったイグニスをみてスコットが尋ねるとイグニスはため息をついて教えてくれた。



ありがとうございました!


イグニスは手合わせをさせられてました。

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