外伝 アレスの家で
「気をつけて行くんじゃぞ」
孫弟子たちを送り出し、姿が見えなくなってから家の中に戻る。
すると、孫弟子と入れ替わるようにリビングに現れた弟子にアレスはため息をつく。
「あちゃー、ちょっと遅かったか。頼むもんがあったのに」
「ちょっと遅かったかじゃないわい、このバカ弟子が!」
寝坊ばかりしおってとアレスが付け足すが、弟子は気にした様子もなく、椅子に座るとのんきに遅めの朝食を食べ始める。
長年治らなかったものなので半分諦めているアレスは対面の椅子に座ると弟子が自分のために用意した水を飲む。
「ジジイ⁉︎俺の水飲みやがって」
「そう怒るな。この前中央区の警備団に行ったじゃろ」
「それがどうしたんだよ」
キッチンまでコップを取りに行った弟子は、腹立たしさ半分、面倒臭さ半分で返事をする。
「イグニスが呼ばれておってな、弟子が見学に来ておったわ」
「あいつの弟子が⁉︎」
さっきまでの機嫌の悪さはどこに行ったのか、朝食のパンを水で流し込むと弟子はアレスに詳しく聞かせろと身を乗り出す。
「で、どうだった?」
「あれは純粋すぎるかもしれんな。イグニスを心配しておった」
「イグニスの弟子で大丈夫か」
「問題はないのじゃろう。魔法がいかんようにしておったくらいじゃ」
スコットの方に魔法を飛ばさないようにイグニスがしているのが見て取れていて、見学の席に魔法が飛ばないような立ち回りをしていた。
過保護なもんじゃとアレスは豪快に笑う。
「想像つかねぇ。それで襲撃者はあいつ一人に?」
「いや、トネリコも参加させておいた」
それを聞いて弟子は引きつった顔をする。
どう考えても過剰戦力だ。
「魔法だけを過信してる連中にゃいい薬だろうけど……そもそも耐えられるのかね」
トネリコは森の外を師匠と旅して、イグニスはとある事件から、敵と認識すれば一切の容赦がないのだ。
下手すると警備団よりも実戦が多いのだ。
あの二人は特にだ。
「動けんのがけっこうおったが、仕方ないじゃろうな」
「ま、こればっかりは慣れしかないってな」
腕を組んで頷いた弟子は、それにしてもと呟く。
「センともイグニスとも似つかないか」
「二人と違った素直な子に感じたな」
「今度レオルドにでも聞いてみるか。あいつはたまに会ってるみたいだし」
今はまだ、直接会うわけにもいかない。
誰も怒ってはいないというのに、本人たちには引っかかりがあるらしい。
センたちと決めたことだ。
二人の間にあるわだかまりがとけるまで、自分たちは手を出さないと。
もちろん手助けはするつもりだが、動き出さないのであればそのままだ。
「早く会ってみたいけど、二人揃って臆病だしなぁ。まったく」
そう言って、アレスにバカ弟子と呼ばれる青年は、玄関の方を向いて我が弟子を思い浮かべるとため息をついた。
ありがとうございました。
師匠ズはレオルドを通して連絡は取っています。




