警備団
襲撃訓練を終えて、やる気を出した者、落ち込む者様々だ。
ただ、新人と中堅ばかりとは言えど、たった二人の魔法使いにやられたことにショックは隠せないようだ。
一応、彼らのために言っておくと、魔法警備団が弱いわけではない。
本当に強いのは一部の突出した人たちだけで、特別警備団が強いというわけでもない。魔法使いとしては平均的なのだ。
強いて言えば、他の魔法使いよりは体力があるかなくらいでやることがあるとすれば、喧嘩の仲裁や魔法使いの暮らす森のパトロールが主だった仕事である。
反省会ではフードを取ったイグニスに、彼を知る人たちは妙に納得していた。
通りで戦い慣れているはずだと。
イグニスの弟子時代を知っている人間からすると、当時と比べて頭を使った戦いになったと感心して驚いていたりする。
彼を知らない団員も、イグニスのいくつかの二つ名を聞くとわかったようで二つ名持ちは伊達ではないと感じたようだ。
もう一人の襲撃者役はフードを被ったままなので素顔は分からないが、魔法協会職員だと名乗った。
団員の中には魔力量が多い人がいるので厄介さはわかっていたが、桁違いの魔力量保持者とは戦うことがないといいと願う団員たちが多かった。
反省会の終わり、イグニスと魔法協会職員に質問が投げかけられた。
「どうしてそんなに強くなれたんですか?」
イグニスはまだまだ自分は弱いと前置きをして、どうしても勝ちたい相手がいるからだと答える。
もう一人の襲撃者役、魔法協会職員は少し悩んでから口を開く。
「師の無茶に答えているうちに」
淡々とした口調だが声音からは苦労が伝わってくる。
いくつかの質問が出て、それに二人が答えて反省会が終わりイグニスとスコットは帰路に着く。
「師匠ってすごく強かったんですね」
「俺一人なら途中で捕まってたな」
「そうなんですか?」
イグニスが頷く。
「さすがに開けた場所で大人数を相手に生き延びるのはな。広範囲の魔法はそう何度も使えないからな」
「そうなんですか?でも、おじいさんは大丈夫だって」
「おじいさん?」
スコットの言葉にイグニスが疑問を持つ。
スコットのいる方に被害がないようにしていたようだが戦いに集中していたせいか気がついていなかったらしい
「元警備団だって言ってました」
「元警備団か。どんな人だったか覚えてるか?」
「えっと――」
あまり老人のことを見ていなかったのでうろ覚えのスコットは頑張って思い出す。
「おじいさんなのにムキムキで、元気がいっぱいで……ガハハって笑う」
「あ〜、たぶん、アレスさんだな。あの人はセンとは違う意味で常識が通用しない」
イグニスの知り合いのようだ。
実力は信頼してもいいが、訓練をしてやると言われたら全力で断った方がいいとイグニスはスコットに教える。
なにやらトラウマがあるみたいだ。
「師匠、そんなに強く言わなくても……」
力説するイグニスにスコットが呆れる。
「それにしても、もう一人の人はどれくらい魔力があったんだろう。たくさん魔法使ってたけど」
「どうだったかな。ただ、あの人の場合コントロールが上手いからもっと多く感じるけどな」
「知ってる人なんですか」
詳しくイグニスが言うのでスコットは知ってる人なのかと尋ねてみる。
「さすがに気づけないか、隠してるから。あれはトネリコさんだ」
「トネリコさんですか⁈」
「顔を見たわけじゃないが、協会であそこまでできる人となるとな。視察に来て急遽訓練に参加してくれって言われたんだろ」
八つ当たり気味にやってるような気がしたとイグニスが付け足す。
襲撃者役ということもあるのだろうが、本来はもっと繊細な戦い方をするらしい。
派手に立ち回っていても、トネリコが戦った場所は被害が少ないとか。
「だから、あんな風なやり方珍しいんだよ」
「そうなんですね」
「そうだな。スコットの性格ならトネリコさんのスタイルが向いてるかもな」
そう言いながら、友人の戦闘スタイルがスコットに向いていそうだとイグニスは思った。
ありがとうございました。




