襲撃者役と魔法警備団
ここは魔法警備団の練習場。
スコットは見学として、練習場に設けられた(一応)安全な場所に座っている。
参加しているのはイグニスなのだが、通常の訓練ではなく今日は襲撃に備えるためのものとかで、イグニスは襲撃者役だ。
どうしてかといえば先日、家に訪ねてきたレオルドから頼まれたのだ。
毎年、団員の中から襲撃者役を選んでいたようだが、戦い方が形式的すぎて対襲撃者の訓練としてはイマイチだと、だらけきった空気を変えるためのものらしい。
襲撃者役の適任として、イグニスに白羽の矢が立ったということだ。
スコットはたまに来る見学者として、現在彼らの走り込みなど眺めている。
団員たちは何も知らずにいつも通りに訓練をしている。
見学者がいるので気持ち張り切っているような気もするが。
情報が漏れるのを恐れた上層部は、期間だけを設けてあとは担当者に任せたため、一部の人間しか正確なことは知らないのだ。
(計画者がそうさせた)
ちなみに今回初の試みらしい。
――ヒュン!
短い休憩を挟み、次の訓練をしようかという時、魔法の球が猛スピードで団員たちめがけてとんでくる。
「なんだ!」
「敵襲か?」
「襲撃に備えろ」
団員たちは五人一組になると死角がないように辺りを警戒し始める。
「がっ――」
突如団員の一人が倒される。
フード付きのローブをまとった二人の人物。
どうやら襲撃者役は二人のようだ。
一つのグループはスコットを守るように立ち、警戒しながらもスコットが安心出来るような声かけをする。
スコットは中身を知っているので別の心配をしていて、不安そうな顔をしていたのでリアリティはあったようだ。
「ここはわしが見ておくから、お前らは向こうに参加しろ」
見学スペースの奥から元気そうなガタイの良い老人がやって来る。
スコットを守るように立っていた団員たちは老人を見るなり、信頼した表情をしてその場を任せ、他の団員に合流する。
「ちゃんと動けとるみたいでひとまず合格じゃな」
合流した団員の行動に満足気に頷き、老人はスコットの方を向く。
「わしは元警備団でな、今日のことはわしの発案なもんで見に来たんじゃ」
「そう、なんですね……」
老人の言葉に返事だけして、不安そうにスコットは姿を出して戦うイグニスを目で追っている。
目深にフードを被った二人組は抵抗してきた者から容赦なく返り討ちにしている。
「心配か?」
スコットが老人の方を向いてコクリと頷く。
「だって、警備団の人たちはたくさんいるのに、師匠たちは二人だけで……」
「そうじゃな、イグニスは実力だけなら近いかもしれんが、なにしろ二人なら大丈夫じゃろう」
安心させるようにスコットの頭をグリグリと撫でると、老人は豪快に笑う。
「たるんどる警備団に負けるほど弱くはないのう、あの二人は」
イグニスは身体強化の他は目くらましなど補助として魔法を使い、徒手空拳で倒していく。
もう一人は、おそらく魔力量が多いのだろう。かなり大きな魔法を連発しているはずだが魔力切れを起こす様子がない。
平然と強力な魔法を使って倒していく。
ただ、時折イグニスは強力な魔法に巻き込まれかけて慌てている。
わざとやっているようにも見えなくはないが、連携は取れているような気はする。
反撃をくらいながらも二人は一人また一人と倒していく。
実戦の形で戦うイグニスたちは、ほとんど実戦のない団員たちからすれば十分に恐怖で、抵抗する気すら失わせる。
立ち向かえる人物はそれだけで表彰ものだ。
最後の一人に襲撃者役の二人が木剣を揃えて団員の喉元に構える。
そこでレオルドが止めに入る。
「すごい」
「新人や中堅あたりに負けるようでは困るわい」
満足そうに老人が言って、老人が帰ろうとするのでスコットが驚くと、老人は頰をかく。
「いてもいいんじゃが、イグニスがいらん気を使うからなぁ。見つかる前に退散するよ」
スコットにそれだけ言って老人は帰っていった。
「全員、集合!」
「はい!」
気絶や重症を負った団員はいないのですぐさま全員がレオルドの前に集まる。
「今日は事前連絡なしで襲撃者訓練を行わせてもらった。十分間の休憩を挟み反省会を行うこととする」
反省会はイグニスたち襲撃者役も参加することとなった。
ありがとうございました。




