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森の外に行くために

「森の外、魔力のない人たちの場所にいる時のルールを説明します」


 そう言って手に持った紙をセルジュは机上にスケッチブックのようなものを立てて持つ。


 すぐそばではなぜかトネリコが山積みの書類と格闘していて、視線が合うとセルジュは一瞬だけ顔をひきつらせた。


 二人ともかなり忙しい立場のはずなのだが、どうして必ず担当者として出てくるのだろうか。


 ツッコミたい気持ちを抑えてイグニスは黙ったままスコットの付き添いとして大人しく説明を聞くことにする。


「守ってもらいたいルールは大きく分けて三つ」


 指を三本立てたセルジュは一つ目と紙を一枚めくる。


「森の外では魔法を使わないこと」


 二つ目とまた紙をめくる。


「魔法使いだと知られないこと」


 後で例外は話すけどねと言って、紙をめくって三つ目をだす。


「これはここでも同じだけど、最低限のマナーは守って故意に騒ぎを起こしたりしないこと」


 スコットがコクコクと首を上下に振る。

 それを見てセルジュは笑う。


「魔法を使わなければいつも通りで大丈夫。一人前になるまで保護者と一緒だし」

「はい」


 大きくスコットが頷く。


「ここまでが守って欲しいことなんだけど、魔法を使ってもいい時もあるんだ」

「?」


 スコットが首をかしげる。


「これは単純に自分の身が危ないとき」


 セルジュが言い終わって、トネリコが口を挟む。


「これは覚えてるだけでいいけど、誰かを守ろうと魔法を使うことを協会は禁止してない」


 淡々と冷めた表情でトネリコが言う。

それは山積みの書類にたいしてなのか、それとも――。


 実際、魔法使いだと知られることは時折各地で起きていて、人ひとり助けたところですぐにその評価が変わるわけでもなく暴力を振るわれた、なんて話は多いのだ。


 魔法は便利なものではなく、恐ろしいものというのが今の世の中での評価なのである。


 けれど、魔法があれば助けることが出来るとして、助けるのも助けず見捨てることも、個人の選択として魔法協会は何もいわない。


「そんなことがないといいと言いつつ、まあ、直面することもあるだろうから」

「わかり、ました」


 あまり意味はわかっていないようにスコットは頷いて返事をする。


 複雑そうな顔をしてもセルジュはトネリコに何もいわない。


 言う必要もないこと。

 けれど、知っておいてもいいことだとも感じているからだ。


「ざっとこんなものかな。あとは実践ってね」


 説明に使った紙を片付けて部屋を出ようとしたセルジュの襟を素早くトネリコが掴む。


「ストップ」


 トネリコに目を合わせないセルジュを捕まえたままトネリコはイグニスたちに声をかける。


「講習会終了の手紙は家に送っておくから、ご苦労様」

「分かった。帰るぞスコット」

「は、はい」


 大人しくなったセルジュをかわいそうだと言うスコットに、イグニスは自業自得だときっぱりと言い切り、帰っていった。



 イグニスたちが帰ったあと、少々お怒り気味のトネリコによって仕事をやらされるセルジュの姿があった。


「二人がサボるせいでこっちは休みがないんだけど?」


 逃げ出せないセルジュを前に、魔法協会の職員たちはここぞとばかりに仕事を持ってくる。


 やってもやっても終わらない仕事は減るどころか増えていく一方のようだったが、セルジュとトネリコはその日のうちに全てやりきってみせるのだった。



ありがとうございました。

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