無意識の恐怖
「風魔法は無属性と同じように難しいと言われてますが、ちゃんと指示さえできれば難しいことはありません」
セルリアはスコットの目の前で紙飛行機を八の字に飛ばしながらいった。
風魔法は他の属性よりも魔力が安定しにくく、そのため扱いにくいとされている。
無属性は型にはまっておらず、オリジナルが多いことが難しいとされている理由だ。
「制御のことは気にせずに扱いやすい威力でまずは慣れていきましょう」
そう言ってセルリアは木々の葉に向かって風魔法を使うように指示する。
「わかりました」
返事をしてスコットが風魔法を使い、何か思うところがあったのかセルリアは別の魔法を使うように指示をする。
「スコット君、基礎の魔法を使ってみてください」
不思議そうな顔をしたもののスコットはセルリアの言う通りにする。
その様子をセルリアは見ながら何かに気がついたようで、スコットに休憩をさせてイグニスの元へ尋ねに行く。
リオンの相手をしていたイグニスは、リオンに一撃を与えて組み手を終わらせるとセルリアの方を向く。
「先輩、最近何かありました?」
唐突にセルリアが尋ねる。
意図が読めないイグニスは顔をしかめておかしなことでもあるのかと聞く。
「暴発まではいきませんが魔力が安定してないようなんです」
「最近か……」
思い返せば最近のスコットの魔法は、今までよりも上手くいかないことが多い。
習得までにかなり時間がかかっている。
「はい。心当たりがあるかと思いまして」
「そうだな」
「本人が無意識だと気付けるのはいつもそばにいる先輩だけですからね」
イグニスは考えるが心当たりが浮かばないようで、セルリアは例を出してみる。
「例えば、魔法が当たって怪我をしたとか、初めて対人戦をみたとか。それで恐怖を覚えることもあります」
「精神的なものでも暴発するんだったな」
思い出したとイグニスは呟く。
どうにも制御出来ない魔法での暴発しか頭になかったようだ。
ついで心当たりを探し始める。
「だとすれば、黒龍だな」
「え?」
セルリアが驚いた顔をする。
捕まったと言う情報は入っていたようだが、まさか戦ったのがイグニスだとは知らなかったらしい。
「すぐに片付けたけどな」
「おそらくそれが原因でしょうね。となれば専門外ですね、僕らは」
イグニスとセルリアは小さくため息をつく。
手助けをするにしても、初めから容赦無く人に向かって魔法を使えただけに声をかけるにしても言葉が難しい。
理解しようとは出来ても、分からない思いなのだ。
「リオンにしても恐怖とは無縁ですし」
チラリとリオンを見れば、大したことのない武勇伝を自慢げにスコットに聞かせているところだ。
リオンもスターリング家と行動して、道中に自分の身を守るためとして盗賊たちに相手に魔法を平気で使っている。
「しばらくは様子見だな」
「そうですね。このまま安定するかもしれませんし」
イグニスは魔力の流れを読むのも苦手なため、ちょこちょことセルリアの空いた時間にスコットを見てもらうことが相談して決まった。
その間リオンは、イグニスとひたすら戦いの実戦を積むことになり、毎回仰向けで空を眺めるリオンの姿があった。
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