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暴発

 スコットの魔法の練習も、基礎は終わってこれから各属性の練習をしていくとなったある日――。


 庭でスコットの魔法の練習を始める。


 今日はスコットの適性である風魔法の練習だ。


 まずは細かな精度を必要としないものとして、軽いものを風で押して真っ直ぐに移動させることからだ。


「向こう側に吹くイメージ……」


 深呼吸をしたスコットを風魔法を発動させる。


 目の前にあるのは空の紙箱だ。

 自然の風でも強ければ飛んでしまうくらいには軽いが、今日はあまり風の吹かない日なので問題はない。


 紙箱はカタカタと揺れて、一瞬だけ宙に浮いてすぐさま元の場所に落ちる。


「なんで……」


 小さく呻きながらスコットは再び魔法を発動させるが、結果はあまり芳しくない。


 そんなスコットをイグニスは草むしりをしながら見守っている。


 ちなみにイグニスは魔法を使わずに手作業だ。

 イグニス曰く、魔法を使ってやるよりこっちの方が早いとのことだ。更地にしかねないらしい。


「こればっかりはコントロールだからな」

「師匠たちは簡単そうに使うのに」


 魔法のコントロールが苦手という師匠(イグニス)でさえ、大抵の初級魔法は簡単にやってのける。


「むぅ、もう一回!」


 頰を膨らませたスコットが風魔法を発動させる。

 先ほどのよりも強い風だが、勢いは途中で弱くなっていく。


「スコット、一度休憩だ。魔法は感情に乗せて使うものじゃない」

「でも……わかりました」


 何かを言いかけたスコットだったがイグニスの顔を見てやめた。

 多分、お説教というより静かに怒られる。

 ただ、怒鳴って怒られるよりも心にくるものだ。


 庭に置かれたイスに腰掛けて、イグニスが用意していた水を飲む。


「こればっかりは積み重ねだな」

「………」


 スコットは納得がいかないといった風で、それを見たイグニスが息を吐き出す。


「感情に任せた魔法がどれだけ危ないものかを俺は知ってる。それがかなり負担になるってこともな」


 センに魔法を当てるために試行錯誤の毎日だったイグニスは、よく必死になりすぎて感情的に魔法を放つことも多かった。


 暴発させたことも一度や二度ではないが、被害がほとんど出ていないのは事前に暴発は防いでくれたセンのおかげである。


 休憩を挟んでスコットが再び風魔法の練習に取り掛かるが、上手くいかず次第に苛立ちが募っていく。


 スコットの様子を見て、イグニスがストップをかける。


「スコット、今日はもう終わりにするぞ」

「もう一回だけ。それで終わりにします」

「――分かった。一回だけな」


 スコットは目を閉じると手を目の前に伸ばして魔法を発動させた。


 絶対に成功させてみせると苛立ちの入ったの魔法は、コントロールが上手くいかず次第にスコットでは制御出来なくなっていく。


 イグニスは咄嗟にスコットと魔法の間に身体を滑り込ませると、スコットをかばうようにして暴発間近の魔法に自分の魔法を打ち込む。


 かなりの衝撃音響きが辺り一帯が煙に包まれる。


 スコットが怪我を負わないように庇ったイグニスは、そのままスコットと煙から離れる。


「怪我はないか?」

「大丈夫です。師匠は?」

「問題ない」


 イグニスは服があちこち破けてはいるが、大きな怪我はしていないようだ。


 身を竦めるスコットの頭にイグニスは手を置く。


「魔法の暴発なんてこんなもんだよ」

「でも――」


 スコットが何かを言おうして突風が吹いて土煙がなくなる。


 見上げれば上空に、ドラゴンに乗った2人の魔法使いの姿が見えた。


ありがとうございました。

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