師匠たちの実力
机上に置かれたいくつもの実験器具。
スコットにはどれも初めて見るものばかりで何に使うものなのか分からない。
けれど、好奇心からじっと見ているとセンが教えてくれる。
「魔力の回復薬を作るんだよ」
「回復薬って作れるんですか?」
「もちろん」
ただし、手間がかかるという。
これから先の魔法練習では必要になることも多いと考えて節約のために作ることにしたようだ。
「俺一人なら買った方が安上がりになるんだけどな」
イグニスは回復薬を作るのは苦手らしい。
失敗して材料費が馬鹿にならないので買った方が早く安く上がるという。
「日持ちはするからね。昨日作ろうって話になったんだ」
それにスコットの勉強にもなるからとセンが付け足す。
「…………薬草が一種類足りない」
材料を揃えていたイグニスがいって、センが材料に目を通す。
「本当だ。買いに行く?」
「そうだな」
店まで買いに行けば、店員は店にないという。
「最近、災害があったとかで手に入らないんですよ」
仕入先が自然災害にあって、今はどこも品薄のようだ。
「と、なると取りに行った方が早いね」
「だな」
幸いにも当てがある。
ドラゴンの住む洞窟近くの森奥に自生している。
森の中を歩いて道がなくなる頃、目的の物がチラホラと見え始める。
センはスコットに教えながら進んでいく。
「おお、いっぱいだ!」
薬草の群生地を見つけ、そこに走ろうとするスコットの襟を掴んで後ろにイグニスは引っ張る。
スコットが尻餅をつくと同時に、爆発音がしてスコットのいた場所の地面がえぐられる。
「な、んで……」
怯えたスコットを立たせたセンは、いつも通りの柔らかな笑みを浮かべている。
「大丈夫だよ。ただ、危ないから動かないでね」
スコットの額に指を当て、センが小声で何かを唱え、スコットに目に見えない膜が貼られる。
「すぐに終わらせるから」
「え?」
センのその声は何も変わらずゆったりとして、安心すら抱かせる。
「こっちも落ち着かせないと」
センはスコットに背を向けて、イグニスに声をかける。
「イグニス、戦えるね?」
「――ああ」
センの声を聞いてイグニスは息を吐き出すと肩の力を抜いた。
イグニスは目を閉じると、魔力の球を二つ作り前方の背の高い木に飛ばす。
すると、黒ずくめの服を着た二人の男が目の前に下りてくる。
「さっさと終わらせる」
「戯言を」
イグニスは男が動く前に素早く火の魔法を打ち出す。
かわされるが、相手との距離を詰める。
相手の攻撃を予測してかわしつつ、攻撃のチャンスを待つ。
男の持つナイフが腕を掠ったが、炎を乗せた拳でイグニスは男を気絶される。
息を吐いてイグニスがセンの方を見ると、センはちょうど男を縄で縛り終えたところだった。
男は焦った顔をしている。
どうやら、魔法が使えないらしい。
「終わった?」
「ああ」
イグニスは木に下がっていた蔦を手に取り、センと同じように男を蔦で縛る。
「運ぶより呼んだ方が早いね。イグニス、頼める?」
「わかった」
身体強化をしたイグニスが警備団を呼びに行っている間に、センはスコットと一緒に薬草を集めていると不思議なものが落ちている。
五センチ四方の立方体でセンが拾う。
手にとって観察してみるが、おかしなところはなさそうだ。
ただ、魔力を発しているので放置するわけにもいかない。
イグニスが警備団を連れて戻ってきたので、男二人と、拾った立方体を警備団に引き渡す。
それから家に戻ると、魔力回復薬を作る。
スコットは作るのが楽しかったようで、センが帰ってからもよく作っていて、家には効果の薄い回復薬が大量に生産されていた。
ありがとうございました。




