セルジュの同類
今日はスコットの一年に一度の健康診断のため、魔法協会横の診療所に行くことに。
痛いことをされないとわかっているので、スコットの足取りは軽い。
「わっ」
スコットが人にぶつかり声を上げる。
慌ててイグニスが駆け寄り、スコットの無事を確認すると相手に頭を下げて謝る。
「申し上げございません。お怪我などは……」
イグニスにしては丁寧で硬い声。
同じように頭を下げたスコットの視界に映ったのは、とても質の良さそうな靴だった。
森の中での暮らしではまず見ることのないような靴である。
スコットは相手の足元からゆっくり顔を上げる。
相手の服装はやはり質の良さそうな生地の、わずかばかり華美な服だった。
どう考えても魔法使いではなさそうだ。
よほどスコットが呆けた表情をしていたのか相手の男は耐えきれないと肩を震わせて笑い出した。
「私の顔に何かついてるかい?」
男に声をかけられて首を振るスコットに微笑むと、心配そうな顔をしているイグニスに声をかける。その声はどこか今にも笑い出しそうなのだがイグニスは気づかない。
「こちらもよそ見をしていたんだ。そう畏まらずとも構わないよ」
「イグニス、問題ない問題ない」
男のそばにいた魔法協会職員の男が横から口を挟む。
「そんな、の……」
目の前に立つ2人を認識したイグニスは、額に手をあて気が抜けたように息を吐いた。
「師匠?」
「知り合いだ。まさか、エルマンとトネリコさんとは……」
華美な服装の男ことエルマンは可笑しそうに笑う。
「全く気づかないとはね。久しぶりだね、イグニス君」
「おもしろいのが見れた」
魔法協会職員トネリコは満足そうな顔をして、ポケットから取り出した時計を確認して、こちらを見ているエルマンに言った。
「5分くらいなら。私もユーリ様に怒られたくはないので」
「わかった。ありがとう」
トネリコに礼を言って、エルマンはイグニスに向き直る。
「話したいことはいっぱいあるけど、時間がないからね。さて、なにから話すか」
「そうだな、あー結婚おめでとうエルマン。なにも出来なくて悪いけど」
「いや、その言葉だけで充分だよ。お互い気軽に会えるわけじゃないんだから。それにしても、イグニス君が弟子を取るとは」
エルマンはスコットを見る。目が合うとニッコリと微笑みスコットに話しかける。
「お勉強は大変だと思うけど、頑張って」
「は、はい」
それから、トネリコが声をかけるまでイグニスとエルマンの会話は続く。
「エルマン様、お時間です」
「わかった。ユーリは怖いからね」
肩をすくめるエルマンに、イグニスは苦笑いをする。
「あいつに怒られる前に戻った方がいいな」
「それじゃ、また今度」
「ああ」
歩き出そうとしてトネリコが呼び止める。
「健康診断が終わったら遊びに来て。久々にイグニスと――」
言葉を切って、トネリコはスコットと同じ目線まで屈む。
「スコット君とも話したいし」
一方的に言って、エルマンと去って行く。
どうやら拒否権はないらしい。
「師匠、高そうな服の人は魔法使いじゃないですよね」
「ああ」
「なんで、そんな人と知り合いなんですか」
「セン繋がりだ」
「納得です。トネリコさんもですか」
スコットが尋ねるとイグニスは頷く。
「あの人はセルジュさんの同僚というか同類?会長候補だからな」
「真面目そうな人ですね。(セルジュと比べると)」
「――そうでもない」
健康診断も無事に終わり、異常がないことに今年も安心して、魔法協会のトネリコの部屋に2人は向かった。
ありがとうございました。




