イグニスのお仕事
「師匠のお仕事は……えっと」
スコットが戸惑っていると、イグニスがため息をつきつつ教えてくれる。
「弟子を育てることが仕事だよ」
「ああ、そっか」
スコットは言われた通りに紙に書く。
「でも、師匠。魔法協会からの仕事してたりしますよね」
「あれは半分義務だ」
「半分は?」
「生活費のためだな」
スコットが納得をしたという顔をする。
「どおりで断らないわけですね」
「まあ、そうだな。下手な依頼選ぶよりかは楽なのが多いしな」
「………楽?」
その違和感をスコットは感じる。
イグニスが自分で選んだらしい依頼の方がたぶん簡単だとスコットは思うのだが。
ちょっとした魔力付与や、魔道具作り、何かの書類なんかを作ったりとか。
たしか、魔法協会に張り出してある依頼は大抵がこんな感じだったと思う。
スコットが不思議そうな表情をしていたのか、イグニスがハッキリした口調でいう。
「性に合わない」
もともと喧嘩っ早いというか、実戦ばかりの弟子時代だったからなのか、細かい作業するよりも動いている方がイグニスにはあっているらしい。
めったにない仕事な上、モンスターと戦いたがる魔法使いは貴重なので、必要な時は大抵話が舞い込むようだ。
「それに素材採集の時なら、心置きなく魔法ぶっ放せるからちょうどいいんだよ」
納得したスコットにある疑問が浮かぶ。
「警備団の方が良かったんじゃ……」
「それも考えたんだけどな――」
一瞬だけおかしな間があってイグニスが続ける。スコットは気づかなかった。
「さすがに好き勝手振る舞うわけにいかないとなると難しいんだよな。戦うの」
「えぇと」
「警備団も組織だから連携の取れる方が大事なんだよ
「なるほど」
妙に納得された気もするが、それはそれで気持ちのいいものでもない。下手に突っ込まれるよりはありがたいが。
「まあ、そんな感じか。休憩したら外で魔法の練習でもするか」
「はい」
イグニスの用意してくれたお茶を飲みながら、スコットは今の話を紙に書いていく。
仕事は弟子の育成。
魔法協会の依頼は素材採集をメインで受ける。
警備団を目指すも連携が苦手でやめたらしい。
(そーいえば、師匠って魔法使いになりたくなかったみたいだけどどうしてなんだろう)
センに聞いた話を思い出したスコットだったが、久々の魔法の練習を前に疑問は頭から消えていた。
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