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早く起きた朝は

  その日のスコットは珍しくイグニスに起こされる前に目を覚ました。


  センに買ってもらった時計を確認すれば、まだ音が鳴るまでに随分と時間があった。


  二度寝をするには少々目が冴えすぎていて寝れそうにない。それに――ぐぅとお腹が鳴る。

  どうにも、再び寝る選択肢は浮かばない。


  ベッドから降りて、スコットはリビングに向かう。

  いつも自分が起きた時には、朝ごはんは完成していて机に並べられている。


  きっと師匠(イグニス)は起きて何かを作ってるはず。

  そしたら、すぐに食べられそうなものを用意してもらおう。


  なんて思いながらリビングに向えば、誰もいない。


「師匠?」


  スコットは首を傾げて、キッチンの方へ行くが師匠(イグニス)の姿はない。


  それならと、イグニスの部屋へ向かう。

  よほどのことがない限り、鍵はかかっていないので、大きな音がしないようそっと扉を開ける。

 

「……寝てる」


  イグニスの部屋を見回せば、机の上に山積みにされた紙がふた山ほどあった。その近くには同じように積まれた本が置かれている。


  常に整理整頓されて、きれいに片付いているはずの部屋である。


  センと比べれば、優しいというか生ぬるいというか、あの家に比較すればこれでも随分ときれいに片付いている部屋である。


  机の書類を覗けば、スコットには内容が理解できないもののすごくと大変だったのはよくわかった。

 

  イグニスを起こそうとして伸びた手をためらいがちに引っ込める。


(師匠、疲れてるんだ)


  ぐぅとお腹は鳴る。

  けれど、起こすのは良くない気もする。

 

「――よし」


  数秒の後、スコットは何かを決断したようにイグニスの部屋を出て行く。


  再びリビングに戻ってきたスコットは食材を保存している箱から、パンや野菜、卵を取り出す。


(毎日師匠の料理見てるし、魔道具も使えるから、きっと大丈夫)


  野菜は小さくちぎってサラダにする。いつも手伝いでやっているから慣れている。

  それから、パンを焼こうとして立ち止まる。


「いつも師匠は……」


  どうやっていたかを思い出してみる。

  確か、魔法で焼いてたはずだ。


「えぇっと……」


  師匠(イグニス)から、一人では魔法を使わないようにと言われている。

 

(ごめんなさい、師匠!)


  心の中で謝って火の魔法を使い、パンを焼いていく。

  順調だったのもつかの間、安定をしていない魔法は、一気にその強さを変える。


  ボウッ――。


「あっ」


  慌てて魔法を消したが、そこにあるのは黒く焦げたパンが2枚。

  幸いにも、無事なところもあるので食べられはする。


(……師匠の料理はよく焦げてるから、たぶん、きっと、平気なはず)


  プルプルと首を振って失敗はひとまず置くことにして、スコットは次の料理に取り掛かる。

 

  魔道具のコンロにフライパンを置いて、卵を割ってそこに落とす。


  ここまでは良かったのだが、次の手順がわからず、わたわたしている間に卵は焼けて――皿に盛り付けられたのはわりと焦げた目玉焼きだ。


「あれ?なんかこう、うまくいくはずだと……」


  不思議とスコットが首を傾げる。

 

  と、そこに急いだ足音が響く。


「悪い、スコット。寝坊した!」


  走ってリビングに着いたイグニスは、驚いて言葉をなくす。


「……………」

「師匠?」


  スコットがまっすぐにイグニスをみる。

  我に返ったイグニスは小さく笑って取り繕う。


「ありがとな、スコット」


  ちょっぴり乱暴に頭を撫でられたスコットははにかんだ。


  焦げの苦味に少々苦しめられながらも、イグニスは完食をして、簡単な料理を教えることをスコットと約束するのだった。


ありがとうございました。

ちなみに、イグニスの初料理は焦げ9割です。

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