スターリング家のマジックショー
盛大な花火の音。
森の大きな広場に建てられたサーカスのようなテント。
その近くではわずかながら、露店がでている。
売られているのは、ショーを見ながらでも食べられるような軽食やスナックがほとんどだが、雑貨を売っている店が二箇所ほどあった。
すれ違う人たちは、テンションの高い人とテントを悔しそうに見ながら露店で買い物する人と極端だ。
「すごいですね」
あたりをキョロキョロと落ち着かない様子で見ながら歩くスコットがいった。
「はぐれるなよ」
「大丈夫です。テントは見えてます!」
胸を張るスコット。
どうやら、迷子になったらテントの前に行くつもりらしい。むやみに探されるよりは、その方がいい。
スコットから目を離さないようにしながらイグニスは人混みを進み、テントの前にある受付までたどり着く。
受付でチケットを見せれば、受付をしていた女性が奥にいた男の子に何かを伝える。
すると、男の子はイグニスをちらりと見たかと思えば、走ってどこかへ行ってしまう。
女性はイグニスとスコットに柔らかな笑みを見せる。
「いつもセルリアとリオンの二人と仲良くしてくださってありがとう。お礼を言う機会をずっと待っていたのよ」
「いえ、こちらこそ助けられることも多くて」
「あの子たちが役に立ってるならいいことだわ」
首をかしげるスコットに気づいた女性は、しまったという顔をする。
「名乗るを忘れてたわ。私はセルリアのお母さんでディーネと言うの」
イグニスはわかっているだろうと、ディーネはスコットに向けて自己紹介をする。
実際、イグニスも家族の誰かだろうとは考えていた。スターリング家は基本的に自分たちで全てを行なっていると知っているからだ。
イグニスとスコットは会場の目立ちすぎず、ショーのよく見えそうな席に案内される。
この辺はセルリアの配慮だろう。
ショーが始まると、はじめに二十代半ばくらいの女性がステージの真ん中で歌を歌う。
澄んだ歌声は美しい。
歌の途中、女性の周りに光る球が飛び回り始め、ステージを華やかに彩る。
女性は歌い終わると同時に姿を消し、歓声が上がる。
男の二人が現れ、人が入りそうなほど大きな箱を持ってくる。
箱を開けて、中になにもないことを見せると蓋を閉じる。
そして、どこから取り出したのか、いつの間にか男の手にはステッキが握られている。
ステッキで箱を三回叩く。
すると、箱を開け、中からシルクハットをかぶった2人の子供が現れる。 1人は先程の男の子だ。
子供たちは、男からステッキを受け取ると二本に増やし、一本ずつ手にしてシルクハットを叩けば、中から白い鳩とフクロウが飛び出てくる。
他にもちょっとしたマジックをやると、子供たちは箱の中に入ってしまう。
男が箱を閉じ再び開けると、始めに歌を歌っていた女性が現れる。
女性は耳に手を当て、キョロキョロとあたりを見る。すると、静かになった会場から、声が聞こえる。
声の場所を女性が探せば、パペット人形が出てきて、女性は腹話術で会話を始める。
内容はピエロを呼ぼうと言うものだった。
現れたピエロはおどけて、観客を笑わせて終盤に入り、ショーは終わる。
スコットはずっと目を輝かせていて、純粋に楽しんでいるようだった。
子供の頃に観たときと変わらずすごいショーにイグニスはあの頃と同じように感動を覚えた。
スコットも楽しめたようで、チケットをくれたスターリング家に感謝しないと、なんて思った帰り道。
スターリング家に捕まり、賑やかな食卓を囲んだのは別のお話し。
ありがとうございます。
なかなか、描きたい理想には届きませんが頑張ります!




