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外伝 チケットが届くまで

番外編として、セルリアの実家が舞台です。


  セルリア・スターリングといえば、魔法使いたちの間じゃ変わり者と呼ばれる。


  どこかつかみどころのない人柄、それも理由の一つであるが、おそらく一番は彼の家が理由だろう。


  魔法使いが忌み嫌われるというのに、あの家は彼を捨てることもせず、いまだに大事な家族として扱っている。


 ましてや、貴族に生まれた魔法使いは存在すら消されることも多いと言うのにだ。

 それは周りからすれば、奇異に映ってしまう。


  スターリング家は名字を持ったれっきとした貴族であるが、彼らも貴族たちからすれば変わり者と認定されている。


  まあ、貴族というのは名前だけなんて本人たちは思っていて、芸人として誰かを心から笑顔にできればそれでいいとさえ感じている。


  名字に誇りなんてない。便利だから使ってるだけというのがスターリング家の認識である。


  そんな家に弟子を連れて、久々に帰ってきたセルリアは今年一年の予定表を見ながら嘘くさいため息をつく。


「西に東に忙しいですね」

「声がかかるだけありがたいってもんだろ」


  独り言のような言葉に返事を返すのは兄である。


「それもそうですが、移動に時間がかかりすぎます」

「そうか?」

「ええ、例えばここから移動するなら間にこちらの町を通れば移動は楽になります。食材の補給もできますし」


  セルリアが予定表のそばに貼ってある地図を指差して繋いでいく。

  それをなぞった兄は、顔を手で覆ってうなだれる。


「本当だな」


  セルリアはわずかにため息をつく。


「プロテア兄さん、地図を確認しながら決めてます?」

「いや、ほとんどしてないと思うが」

「やっぱり」

 

  と、そこにバタバタと走る音が近づいてくる。


「お師匠、昼飯だって!」


  パンをくわえながらやってきたのはリオンだ。

 

「リオン、歩きながら食べるなといつも言ってますよね」


  呆れた顔をしていうセルリアの言葉にしゅんとするリオン。


「いいじゃないか、呼びにきてくれたんだろ。昼飯はなんだ?」

「スープとパスタだって、プロテア(にい)

「そうか」


  彼らからすればリオンも家族の一員で、慣れきったリオンもスターリング家には遠慮がない。


  食卓についたセルリアは父親と祖父に声をかける。

  公演のない時は家族一緒の食事が基本なので、むやみやたらと探すより食事の時間を待った方が早い。


「魔法使いのことの公演なんですが、特別招待チケットを2枚ほどつご――」


  都合してもらえたら、言いかけて遮られる。

  ものすごい食い付いた家族たちの手によって。


「もちろんだ!何枚でも用意しよう」

「2枚で十分です」

「遠慮しなくていいんだぞ」


  どこから取り出したのか、祖父の手にはもう特別招待チケットが握られている。


  毎年、用意すると言われていたチケットもいつも断っていたから、家族は素晴らしく騒がしい。


  囲まれたセルリアの向かいで、リオンが呑気に呟く。


「2枚、2枚……。あぁ、もしかしてスコットんとこか」


  呟きが聞こえたらしく、視線はリオンの方へ。

  珍しくたじろぐリオンを見て、セルリアは咳払いをして説明をする。


「前に話したと思いますけど――」

「もしかして、狼くん?」


 子供時代のセルリアがよく話題にしていたので、家族はイグニスのことを知っているのだ。


 話を聞いた家族たちは一匹狼という認識にしているようで、狼くんとイグニスを呼んでいる。


「ええ、リオンが知り合った子がお弟子さんでして、リオンに懐いてくれてますから、ぜひ招待したいと」

「なるほど、それならぜひお会いしなくっちゃ」


  姉や母がどこから取り出したのかわからない紙を用意して手紙らしきものを書き出す。

 

  セルリアは祖父から受け取ったチケットを急いで封筒に入れると、連れてきていたフクロウに持たせて、素早く外に飛ばし配達を頼む。


  ブーたれた家族の目線はうっとうしいので気がつかないふりをして、リオンを連れてセルリアはさっさとこの場を離れ練習を開始することにしただった。



ありがとうございました。

本編から横道にそれた話ですが、楽しんでいただけたら嬉しいです。

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