来訪者
センの家から帰って数日、のんびりと過ごしていたイグニスに魔法協会から連絡が来る。
連絡をして来たのはセルジュで、魔法協会からかけているのか周りの声が騒がしい。
「イグニス?今からこっちに来れるかな」
いつものような軽さのないセルジュの声はどこか真面目で、違和感があった。
「問題はないですけど……」
少し言い淀んでイグニスが答える。
「それならすぐに来てくれる?僕が行けたら良かったんだけど、逃げ出す暇もないほど忙しくてね」
「そうなんですか」
「うん。警備団からの報告が多くてさ、仕事が一気に増えたから」
ため息が聞こえたと思えば、急かすような声が奥から聞こえる。
セルジュは適当に返事をする声が聞こえて、バサバサと紙をひっくり返しているような音が鳴る。
「それじゃ、待ってるね。直接、部屋にきても大丈夫だから」
急ぐように通信を切られる。
スコットの方をチラッとみて、頭に手を置く。
家に一人で留守番させておくの不安ではあるが、警備団からの報告とセルジュが言っていたから、あまり連れて行かない方がいいだろう。
それに警備団が目を光らせてくれているとセンが言っていたから、少しくらいなら平気だろう。
「すぐに帰ってくるけど、しっかり戸締りはしておけよ」
「はい。いってらっしゃい、師匠」
イグニスが急いで魔法協会に向かって、しばらく過ぎた頃、玄関の戸が叩かれる。
(誰だろう?)
スコットは首をかしげ、玄関の方へ向く。
(出るなとは言われてないし、フィアちゃんたちかもしれないし)
意を決して玄関の扉をスコットが開けると、そこには一人の男が立っていた。
真面目そうで、運動が得意そうな感じの男で腰のベルトに短剣をつけている。
男は一瞬驚いた顔をして、スコットに声をかける。
「私は警備団のレオルドだ。師匠のイグニスはいるかな?」
手には魔法警備団の印が浮き出た手帳を持っている。ちなみに魔法で作られている手帳は本人しか使えない。
「………」
スコットはレオルドを見上げ、黙って首を横に振る。
一人で初めての人に会うこともないため、わりと不安が強くなってるスコットは、警戒気味だ。
レオルドは頭をかいて、困った顔をする。
「そうか。今日しか空いてなかったんだか仕方がない。出直そう」
「あっ、あの……師匠すぐに帰ってくるって言ってたから、その」
スコットは自分の服をぎゅっと掴んで、レオルドに話す。
その様子にレオルドはかすかに笑い、スコットに頼みごとをする。
「30分だけここで待たせてもらっていいかな?帰って来なければ、日を改めよう」
スコットはコクコクと頷く。
玄関先で立つレオルドのそばに、スコットはちょこんと立つ。
家の中に戻っても良かったのだが、なんとなくスコットはそうする。
スコットの様子にレオルドが微笑めば、スコットは首をかしげる。
「ああ、イグニスの弟子は優しい子だと思ってな」
目をパチクリしてスコットはレオルドを見上げる。
「師匠のこと知ってるんですか?」
すると、レオルドは大きく頷いた。
「イグニスが弟子入りしたときから知っているな」
「弟子入りしたときから……」
「イグニスの師匠のセンとは友人でな。だから、イグニスのことはよく知っているんだ」
「そうなんですね」
スコットはイグニスが警備団から声がかかっていたという話を思い出し、レオルドに尋ねようとして瞬間、息を切らしたイグニスが帰ってくる。
右手には焔の魔法を発現させて――。
スコットの隣に立つ男の姿を見た瞬間、イグニスの思考は停止する。
呼吸をすることすら忘れるイグニスは、今まで見たことがないほど驚いた顔をしていた。
ありがとうございました。




