センとスコット
町に行ってからの数日間、イグニスは仕事を終わらせるために自室に引きこもっての作業が続いていた。
そのため、スコットはセンと過ごす時間が多くなっていた。
イグニスに言われた魔法の練習をするスコットを、家事をしながらセンが見守る。
苦戦するスコットにセンが声をかける。
「難しそうだね」
「はい」
困ったように頷くスコット。
「師匠に聞いてもよくわからなくて……」
「あの子は感覚的だから。ほとんど独学だし」
「独学?」
スコットが首をかしげる。
「うん。魔法を教えようにも魔法使いなんか誰がなるか!って聞いてくれなかったし、まともに教えたのは魔法とは関係ないものばかりだね」
「……師匠」
この場にイグニスがあれば必死で止めそうな内容をセンがサラリと言ってのける。
センの言葉に驚くスコットは瞬きを繰り返す。
「魔法使いになりたくなかった?」
「そうだよ。イグニスは初めて会った日からそう言って勝負を仕掛けてきたんだ」
「初めて会った日からって……」
呆れた風なスコット。
自分が初めてイグニスと会った日を思い出して不思議そうな顔をする。
「どうしたの?」
「初めて師匠と会った日の言葉が、師匠らしくないなぁって」
今思えばどう考えてもおかしいとスコットは思う。
あんな直球な言葉、あの日以外で聞いたことはないし。
「なんて言われたの?」
「家族だって、何があってもずっと師匠って」
センが目を開いて驚く。信じられないといった顔をした後で、クスリと笑ってつぶやく。
「イグニスがそんなことを……」
センの言葉は聞き取れなかったスコットだが、表情に首をかしげる。
それに気づいたセンはスコットに照れたように微笑む。
「似たようなことを僕もイグニスに言ったからかも?でも、確かにイグニスにしては珍しいね」
目があって二人はクスクスと笑う。
時折、イグニスの部屋に続く通路を見るのを忘れず、センとスコットは会話を続ける。
「師匠って子供のときどんな感じだったんですか」
イグニスの友好関係が狭いこともあり、人から聞くことはない。(そもそも、イグニスがスコットの耳にいれないようにしてる)
本人も自分から言う気がないというか、わりと隠したがっている感じで、あまり話さないので知らないとかの方が多い。
「うーん、そうだね」
センは少し悩んで話し始める。
「イグニスとは毎日勝負をしてたよ」
「勝負?」
頷くセン。
「うん。この前の僕に魔法を当てられたらって勝負。一人前の試験の前までに当てられたら、魔法使いをやめてもいいって約束でね」
「そんなことを……」
驚くスコットに、センは困ったやつだよねという風に笑って、言葉を続ける。
「一人前になった後、僕は警備団にイグニスはいくとばかり思ってたから、弟子を取ると聞いたとき本当にびっくりしたんだ」
「警備団に」
「声がかかってたし、イグニスもその気にみえたんだけどね」
「それがどうして」
首をかしげるスコットに、不思議だよねとセンが言う。
と、そこへイグニスが階段を降りる音が聞こえて、二人はそれぞれの作業に戻る。
センはスコットに内緒だよとジェスチャーをして、スコットはそれに小さく笑って頷いた。
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