かつての日常 その1
「協会に呼ばれたから留守番頼むね。スコット君、イグニス」
時刻は朝食の時間で、こんがりと焼けたトーストを食べながらセンが言った。
ちなみにトーストを焼いたのはイグニスであるため、ところどころ焦げが目立っている。
「こんな早くからか?」
「うん。間に合わないかもしれない仕事があるんだって、さっき連絡がきたんだ」
魔法協会へセンが手伝いに行くのは昔からで、イグニスにとって不思議ではないのでサラリと聞き流す。
スコットは二人の会話を聞いて、疑問を口にする。
イグニスをとっているセンは魔法協会で働くことは出来ないはずなのである。
「協会と警備団に弟子はいないはずじゃ」
センが頷いて答える。
「うん。協会とか警備団の人は弟子を取れないよ。僕は昔、協会にずっといたからね。忙しいときに呼ばれることがあるんだ」
「協会の人間が俺らによく声をかけてくるのも、それが原因なんだよ」
「そうなんですね」
使った食器を全員分片付けてからセンは、イグニスとスコットに声をかけて魔法協会に向かった。
「さて、と」
立ち上がったイグニスは仕事のために自分の部屋に戻ったのかと思いきや、箒とちりとりを持って戻ってくる。
「お仕事やるんじゃないんですか」
首をかしげるスコット。少々混乱しているようだ。
「それは後だ。まずは、家の片付けだ」
今、スコットたちがいる居間は整理整頓が行き届いた空間とでも言っておこう。
この家、モノが散らかってない部屋の方が少ないのである。
キレイな部屋となると、イグニスの部屋と昨日スコットが案内された部屋くらいだという。(セン談)
残りの部屋はというと、本やら書類やらでかなり散らかっていた。
書類などの片付けや整理はイグニスが、散らばった本を集めて整理するのはスコットがやって、少しずつ片付いていく。
午前が終わって、イグニスの作った昼食を食べ終えた頃、センが家に帰ってくる。
「ただいま――」
センは居間を見渡して、なにか違いに気づいたらしい。
「ありがとね。イグニス、スコット君。これでもっと仕事が捗るよ」
スコットはセンに笑いかえすが、イグニスはそっぽを向いた。
机の上の料理を見て、センが笑う。
「お昼作ってくれたんだ。ありがとう。料理は上達したみたいだね」
「魔法だって上達した」
少しだけ意地を張ったようにイグニスがいう。
センはなにか閃いたのかいたずらな笑みを浮かべる。
「試してみる?」
その声はどこか楽しそうで、絶対的な自信があった。
ありがとうございました。




