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師匠の師匠

イグニスの師匠の登場です。

  いくら同じ地区といっても、師匠(セン)の家は地区の外れにあり、イグニスたちの家からみれば正反対に位置している。

 

  そのため、行くには乗り物を使っても数日がかかる。

 

  センの家に着く頃には慣れない長旅にクタクタになっていた。


  ログハウス風の建物。簡素で飾り気のないの家は、あの頃のように人里離れた場所でポツンと建っていた。


  わずかな距離をおいて、イグニスの足が止まる。 決意をしたつもりが行くのにためらいがある。


「ここが師匠の師匠のお家」


  イグニスの様子に気がついていないのかスコットは、目の前の家を眺めている。

  まるで自分の家と比べているようだ。


  チラリとスコットを見て、イグニスは僅かに笑みをこぼす。

  ここに来たのは、スコットを守るためでもあったんだと思い出す。

  自分一人ならおそらく、いや、絶対に会いに行くことはなかったと言い切れる。


  一度深呼吸をして、玄関をノックするために扉に向かう――――。


  ドシャーーン。


  この場に似つかわしくない派手な音がなる。どうやら音は家の中のようだ。


  スコットは驚いてビクッと身体が跳ねる。

  イグニスは特に驚いた風もなく、ただ呆れたよう息を吐いた。


「あいつは……」


  なんの躊躇いもなく、イグニスは家の中に入ると右に曲がり、一番奥の部屋を目指す。

  スコットがその後ろを慌ててついて行く。


  たどり着いた部屋は書斎のようだ。

 天井に届きそうなほど大量の本で埋まっていて、中心のあたりが大きな山になっている。


  イグニスはその中心のあたりの本を素早くどかしていく。

  すると、人の手が見えてくる。


  スコットも戸惑いながらもイグニスを手伝って本をどかしていく。


  ようやく動けるほど本がどかされて、本の下敷きになっていた男が上体を起こす。


  転がっている眼鏡をイグニスが渡せば、その人はお礼を言って眼鏡をかける。


「助かったよ、イグニス。……ん?イグニス?」


  一瞬驚いた顔をしてから、イグニスを横に視線をずらす。スコットに気がついて、目が合うと優しげに微笑んだ。


「じゃあ、この子がスコット君か」


  立ち上がると、白衣の裾を軽くはたいて埃を落とす。

  それから、彼はイグニスの目を見て優しく笑う。


「おかえり、イグニス。それと――」

 

  スコットに目線を合わせるためにかがんで、先ほどと変わらない笑みを見せる。


「初めましてスコット君。僕はイグニスの師匠のセンです。これから、よろしくね」


  スコットは目をパチクリとさせて、センをまじまじと見る。


「あれ?おかしなところでもあった」


  焦った表情でセンはイグニスを見るが、イグニスも理解が出来ないといった顔をしている。


「どうした?」

「だって、もっと怖い人だって思ってて、だけど、怖くなくて、優しそうな人で……だって、みんな」


  スコットは混乱しているように言葉をこぼす。

 

  ボサボサの髪はあちこちに跳ねて、サイズが大きいのか少しずれ落ちている白衣はシワだらけ。


  強さなんて微塵も感じられない容姿をしていて、初対面だというのにその笑みはなぜかホッとする安心感がある。


「なんて聞いたの?」

「化け物って、師匠より強いって……」

「アハハ、そういうことか。そう呼ぶのはイグニスやセルジュくらいだよ。僕は決してつよくない」


  強くはないと断言をするセンにイグニスは頰をかいて、スコットに言う。


「魔力の量を調べられるか」

「えっと……」


  スコットはセンの魔力を探ってみる。

  驚いた顔をイグニスに向ける。


「ほとんどない?」

「うん。魔法使いとしては絶望的なほどにね」


  朗らかに言うセンはどこか楽しげだ。

 

  それをみながら、イグニスは弟子時代を思い出しながら誰にも聞こえないよう小さく小さく呟いた。


「だから、化け物なんだよ」

 

ありがとうございました。


相手の魔力量は近くにいてなんとなくわかる程度といった感じで、人を探すみたいなことはできないです。

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