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思い出したくない過去は

「おやすみなさい、師匠」

「おやすみ」


  大きなあくびをしながら自分の部屋へ行くスコットを見送って、扉が閉まるのを確認してイグニスはため息をつく。


  どうしたらいい?


  セルリアから渡された瓶を見ながら、イグニスは静かに息を吐いた。


「あの時より強くなったはずなんだけどな。どうして不安になるんだか……」


  あくまで噂――。

  けれど、イグニスにとっては不安を煽るものでしかない。


  通称『黒龍(こくりゅう)』。

  魔法使いの犯罪組織といった存在で、普通に暮らしていれば関わることもない。イグニスが問題を起こしていたばかりの子供でも、彼らに狙われることはないはずだった。

 

  イグニスは友人に巻き込まれる形で、黒龍と戦ったことがある。

  あの時、師匠たちが来てくれなければどうなっていたかと思うと、いまでも恐怖がわずかに残る。

  あれからすぐに魔法警備団が組織を壊滅させたらしいと聞いた。


  まあ理由はくだらないというべきか、たまたま二代続いて魔法になった魔法協会の副会長が、子供がつくった一人前の魔法使い歴代最年少を塗り替えられたくなかったからというものらしい。


  恨まれる筋合いもないけれど、壊滅させたとなれば恨まれていても仕方がない。

  弱い相手から狙う。

そう考えると自分が一番に狙われる可能性は高いだろうと思う。

  魔法使いとしてまだまだ未熟な弟子との二人暮しで、イグニスは守る戦いとなると苦手である。


  スコットを一人にさせないのが一番の対策として、頼れる人間がいるかイグニスは考える。


  一番に思いつくのは友人のトアルだ。

  あの事件の後、すぐに引っ越したトアルの居場所はわからない。そもそも、どんな顔して会えばいいかわからない。


  カタリナは、ダメだ。イグニスよりも弱いし、関係ないことに巻き込む必要はない。


  セルリアは魔法の使い方は秀逸で貴族として自分の身を守る術は持っているだろうけど、戦うとなると難しいだろう。


 セルジュさんは、十分な実力者だ。あの人は立場上かなり忙しい人で、連絡がつかないことが多い。(よくサボっているけど)


  魔法警備団にも知り合いはいるが、あの人も忙しい人で、各地を飛び回っている。警備団に連絡しておけば話ぐらいはできるかもしれないが。


「はぁ……」


  何人か挙げてみたものの、戦いとなると頼れる人はかなり少ない。もともと、知り合いが少ないのもあるが。

  せめて、あの人(セン)みたく強くあれればよかったのに。


  つい出そうになるため息を、頰を軽く叩いて止める。

  言っても仕方がない。そうなれるように、学べばいいだけだ。


「やっぱり……あいつか」


  頼りたくないというよりも、昔からの意地みたいなものだ。


  せめて、相手にされるくらいに強くなれたら――。


  イグニスはそんなふうに思いながら、窓からそっと夜空を見上げた。



ありがとうございました。

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