空の上から
合同授業もちょっとしたトラブルがあったりしたけど無事に終わり、スコットは約束していた空の旅に向かう。
「師匠、行ってきます!」
ニコニコと嬉しそうに、ものすごく嬉しそうな笑みをイグニスに向けるスコット。
「怖くなって泣くなよ」
「泣きません!」
「そうか。頼むな、セルリア」
「ええ」
庭に待たせているリーフェにセルリアは近づくと、優しく頭を撫でる。
「リーフェ、帰る前に少しだけ散歩を頼めるかな?」
リーフェは周囲を見渡して、スコットを目を輝かせたスコットを見つけると、地面に体をつけて伏せの格好をする。
どうやら、乗せてくれるらしい。
「ありがとう、リーフェ。それじゃ、行こうか」
「はい!」
スコットはリーフェによろしくねと声をかけ、セルリアの手を借りてリーフェの上に乗る。
「空の旅に一名様ご案内です」
セルリアの台詞を合図にリーフェが羽ばたき、一気に空の上にとのぼる。
地面を離れる瞬間だけ大きく揺れて、揺れも風も浴びない快適な乗り心地だ。
「うわぁ……」
スコットが感嘆の声を上げる。
初めての景色にスコットのテンションは上がりっぱなしだ。
下を覗き込むと、まるで子供のおもちゃのように森や町が小さく見える。
広がった森の中に散らばるように建つ家々、森の外にはわずかに町や村があった。
リーフェがゆっくりと森の上を一周して、イグニスとスコットの家の庭に着陸する。
「おっかえり〜。楽しかったか?」
リーフェの上から降りるスコットに手を貸しながら、リオンが言う。
「すごくすごく楽しかったです」
心の底から楽しそうに笑うスコット。
空の旅にかなり満足したようだ。
「あぁ、そうだ。忘れてました」
セルリアは帰り支度した荷物から、一本の瓶を取り出す。
それから、リオンとスコットが仲良く会話をしているのを目だけを動かして確認すると、一瞬だけ真面目な顔をする。
「先輩――」
すぐにいつもの芸人スマイルを貼り付けたセルリアは言葉を続ける。
「復活したようですよ、これ」
そう言ってセルリアが渡してきたのは、黒い翼のない竜がラベルに描かれた酒の瓶だった。
ラベルの絵を見た瞬間イグニスの呼吸が止まる。顔がひきつるイグニス。
「……ッ」
「っと、ちゃんと持ってくださいよ。あくまで噂、いつ手に入るかわからないんですから」
セルリアはイグニスに表情を隠せというふうに瓶をしっかりと持たせる。
「割れたらもったいないもんな」
慌てて取り繕うイグニスは瓶の絵から視線が離せなくなるのを無理やりはがす。
「さ、リオン。そろそろお暇しましょう」
「そうだな。またな、スコット」
「また、来てください」
「ありがとな」
リーフェにも感謝をすると、機嫌良さそうに唸った。
セルリアとリオンが、リーフェの上に乗る。
リーフェはリオンを少しだけ睨んでばさりと空を飛んだ。
リーフェの姿が見えなくなるまで、スコットは手を振りながらずっと眺めいた。
ありがとうございました。
読んでくれる方がいるなら嬉しいなぁと思いつつマイペースに書いてます。