魔道具
「魔道具の役割は主に二つです。リオンには一度説明をしているので、スコット君なにかわかりますか?」
セルリアが尋ねる。
少し迷ったようにスコットは答える。
「えっと、ずっと魔法を使わなくてもいいとかかなぁ」
「正解です」
「長時間の魔力のコントロールは、俺達でも難しい」
日常で魔法を使うなら、低威力の魔法だ。
威力の弱い魔法ほどコントロールが難しい。高威力の魔法なら魔力を適当に使っても形にはなる。
コントロールがうまく行かなければ暴発に繋がる。魔力が多いほど、危険になるのだ。
「コントロールって難しいもんな」
リオンが頭を掻いて呟く。
「もう一つは、リオン。なんでしたっけ?」
いたずらっぽくセルリアは問いかける。
リオンが覚えていないだろうと思いつつ、覚えていてほしいと思いながら。
「そ、れは……魔力が、少なくても扱えるだったか」
「お見事」
ホッとするリオンはそれを隠すように、スコットに自慢をする。
スコットはすごいとリオンを褒める。
弟子達の様子に呆れながら、セルリアはカバンから取り出していた透きとおった小石を二人に見せる。
「これは魔石です。魔力の入った石、魔力の塊と考えるといいですかね」
「魔道具には必ず魔石が入ってる」
イグニスはコンロを触って、コンロから魔石を取り出す。
「魔力を通さなきゃただの綺麗な石にしかみえない。魔石は魔力を流すと光るから判別はできる」
そう言って、イグニスは魔石に魔力を流す。
すると、魔石は淡く光を放つ。
「わぁ」
スコットが感嘆の声を上げる。
「魔石に魔力が入ったことですし、コンロを使って見ましょうか」
コンロに魔石を入れ直す。
鍋に水をいれると、コンロの上に置く。
「リオン。大きなスイッチに少しだけ魔力をいれてください」
さっきと同じ失敗はするなということらしい。なんとなく笑顔が怖い。
「わかった」
リオンはコンロのスイッチに手を伸ばすと魔力を入れる。
「これで電源が入りました。スコット君、どれでもいいので、押してみてください」
「はい」
スコットは迷って、自分に近い場所のスイッチを押す。
コンロから火が出る。先ほどのような大きな火でなく、上に置いた鍋からはみ出さないくらいの火だ。
「ついた」
リオンが呟く。
「師匠、できた!」
「そうだな」
嬉しそうにはしゃぐスコット。
「他のスイッチを押すと火の強さが変わります。細かい調整はこれではできませんが」
「やっすいやつだもんなぁ」
「壊されてもいいようにです」
鍋の水が沸騰すると火を止める。
「リオンがやったように魔力を間違えなければ、安全に使えます。魔道具は時として、武器として使われるときありますけどね」
「もともとは魔力の少ない魔法使い用に作られたものだけどな」
魔道具についての補足がセルリアとイグニスからはいる。
聞きながら、リオンがなにかを思いついたように声を出す。
「お師匠、これも使えるんじゃ」
「ここで使うのはできるでしょうね。ですが、森の外ではオススメしません」
セルリアはリオンの考えが分かっているようで、そう言葉を返す。
「だめかぁ」
がっかりするリオンを不思議そうにスコットは見る。
「いや、さ。魅せる魔法ってので使えそうに思ったんだよ」
「リオンは機械に頼る前に、基礎を練習するべきですけどね」
クスクスと笑って、セルリアは宙に手をかざす。
球が浮かんで中にスノードームのようなものができる。
「ボクが使うのは、こんな魔法です。戦うためでも、生活のためでもない。人を笑顔にするための魔法ですね」
「いつみてもスゲーな、それ」
「簡単にできるもんでもないだろ」
スコットはまじまじとセルリアの魔法を見ている。リオンは悔しそうに眺める。
「思いたいですが、容易くできる人もいますから」
「あいつは特殊すぎるだろ。あそこまでのコントロールはまず普通は出来ない」
「えぇ、ですから誰もマネ出来ないものを作ろうと考え中で」
心底楽しいと笑みを浮かべ、セルリアは魔法を消す。それから伸びをする。
「さて、空の旅でも行きますか」